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“顔面力が強すぎる”仏像のインパクト。思わず二度見、三度見してしまう

子供にも老人にもみえる不思議な仏像

護法童子立像

護法童子立像は眼球部分をくり抜いて、そこに目を描いた和紙を裏側から貼った水晶をはめ込む「玉眼」という技法を用いている

 慈恵大師に比べると、小ぶりではあるが「何にも属さない生物」のような容貌が一度見たら忘れられない「護法童子立像」。童子というくらいなので、子供の姿として作られていて、二の腕の丸みなどは確かに子供のようだが、顔を見れば見るほど陰険な老人のようにも見えてくる。  また、皮膚の色が赤いことも手伝って、何者かのようで何者でもない不思議な存在感で立っている。それでも、この像が架空の存在ではない感じがするのは、描写の的確さと彫刻の緻密な技術の賜物だ。  じっと見つめるほど、これは木で作られた像ではなく、生命体であるように感じられて仕方がない。像と視線が合う位置に顔を持ってくると、生命感は倍増する。  これは、眼球部分をくり抜いて、そこに目を描いた和紙を裏側から貼った水晶をはめ込む「玉眼」という技法の為せる技。仏像好きは、仏像が「ある」ではなく「いる」と表現するが、この像を見ていると、仏像好きでなくともそう言いたくなるほどの生々しさを感じることだろう。

多くの宗派の原点となった天台宗の全景が見える展示

最澄と天台宗のすべて

仏像だけでなく、最澄など天台宗の高僧たちの歴史に触れることができる

 今年2021年が、最澄が亡くなってちょうど1200年という大きな節目に当たることから、同展覧会が開催されることとなった。平安時代に比叡山で最澄が開いた天台宗は、日本仏教の一宗派だ。しかし、それだけでは語りきれない部分がある。  なぜなら、鎌倉時代に隆盛し現在にまで伝わる宗派の祖たちも比叡山での修行を経てそれぞれの道へ進んでいるからだ。法然・親鸞・一遍・栄西・道元・日蓮など、比叡山が輩出した高僧には枚挙にいとまがないことから「日本仏教の母山」とも呼ばれるほど、天台宗は日本の歴史においても重要な存在なのだ。  今回の展示では、すでに紹介した奇抜な仏像ばかりではなく、いわゆる心落ち着く仏像や、歴史上に重要な書画の数々も出展されている。また、展示方法も、最澄に至るまでに仏教が辿ってきたインドや中国などの歴史から、天台宗の流れを持つ宗教が、時系列的に見やすく展示されているので、仏教に触れたことのない方の学びの一歩目としても重宝することだろう。  「とっつきにくい」「近寄りがたい」と思われがちな仏像の中にも、造形としての面白みがこれほどまでに詰まっている。日本の仏教という存在を、「お勉強」からではなくこうした像への「興味」から知っていくのも悪くないのではないだろうか。 ※写真は報道内覧会にて、特別な許可を得て撮影 文・写真/Mr.tsubaking
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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