ライフ

“親ガチャ”は現実にあるのに「貧困は怠慢のせい」と叩く人たちの無知

「私は乗り越えた。できないのは怠慢」という生存者バイアス

貧困は自己責任。「就職氷河期もコロナも自分の力で乗り越えてきた」という自負がある人のなかには生存者バイアスがかかっている人も多く、「自分ができたのだから(普通に努力すれば)誰でもできるに違いない」と考えるゆえに「できなかった人」を「ただの怠慢」だとみなして、憎悪の対象にしてしまうことがある。 このような考え方は非常に短絡的であるし、なんら根拠もなく「自分ができたのだから、失敗したのはその人に責任があるはずだ」と、ただ自分の溜飲を下げるために「自分より劣った」「叩いてもいい」対象を見つけて暴論をふりかざしているにすぎない。

生まれつき「持っていない」人たちがいる

新型コロナ感染症の影響で失業した人や解雇された人が激増しているとはいえ、その割を食ったのは多くの場合、女性や非正規雇用者であり、もともと「中流」以下の生活を送っていた人たちである。そうした貧困化のリスクが高い層は長い間、多くは本人が生まれる前からすでに格差が固定されていて、下層から上層へと上がって行くことが非常に困難である。 固定化された格差を崩壊させることは個人の努力では不可能だし、貧困を脱するのに必要な文化資本、知的資本、社会的資本を「生まれつき」持っていないために、そもそも中流以上の家庭に生まれ育った人々とは条件があまりにも違う以上、比較のしようがない。

「住所不定無職」になるまではほんの一瞬

突然解雇を言い渡された場合、次の仕事を見つけるまでに家賃が支払えなくなって、賃料を延滞したり家を追い出されたりすることもある。低賃金ゆえに生活に余裕がなく、親に仕送りをしているなどの事情で貯金が十分になければ、「住所不定無職」になるまではほんの一瞬だ。
次のページ
家を失って、悪循環を抜け出せない
1
2
3
1991年生まれ。フリーライター・コラムニスト。貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題などについて、自らの体験をもとに取材・執筆。文春オンライン、東洋経済オンラインなどで連載中。著書に『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声』 twitter:@bambi_yoshikawa

年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ