エンタメ

「歯医者が怖い」を変えたい。現役歯科医の斬新すぎる挑戦と決意

「私が生きられたことに意味があるのかもしれない」

鹿乃さやか——実際に活動を始めるきっかけになった出来事はありましたか? 鹿乃:2019年の夏に、交通事故で大怪我をしてしまい何度も手術したんです。ICUに入院するくらいの怪我で、麻痺が残って車椅子になるかもと言われたんです。でも、奇跡的に普通に歩けるようになって、“私が生きられたことになにか意味があるのかもしれない”って考えるようになった。そこで、これから先は後悔して生きたくない、やるべきことがあるはずって。  今までだったら、“私は歯医者だから(できない)”と自分の中で引っかかってしまって、表立った活動をすることが怖かった。でも、叩かれてもいいから、好きなことをしようって思えたんです。 ——どういう活動からスタートしましたか? 鹿乃:最初に始めたのが、ライブ配信アプリの「Pococha(ポコチャ)」。友達がライバーをやっていて、「話すことが好きだし向いていると思うよ」って薦められたんです。始めてすぐにSランク帯というライバーのレべル最上位にいけたんです。 ——やついいちろうさん主催の「やついフェス」キャンペーンガールオーディションでグランプリを獲りましたよね。賞を受賞してからは、変わりましたか? 鹿乃:じつは、それが初めて受けたオーディションだったんです。優勝特典としてサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんプロデュースで、歌を作ってもらえたんです。曽我部さんが「歯医者の曲を出しましょう」って言ってくださったので、「White」っていう歯の曲を作っていただきました。歌詞には、80歳になっても20本の歯を保とうという意味の「8020」も入っています。 ——“歯医者”というご自身の強みを生かして、活動を始めたのですね。 鹿乃:はい。そこから歯医者が怖いというイメージを少しでも無くしたくて、被写体モデルやYouTubeやTikTokを始めて、「ミスiD2022」というオーディションにも挑戦してみました。 ——激動の1年でしたね。 鹿乃:大学6年生のときにアイドルにならないかという誘いもあったんです。アイドルをやりたいっていう気持ちもあったけれど、国家試験もあった。絶対に歯医者にならなきゃいけないと思って諦めたんです。  以前は、“歯医者だから(できない)”という考え方だったけど、今は“歯医者だからこそ”やりたいと思っていますね。

ライバー、歯医者、被写体モデル、YouTuber。忙しいけれど充実した毎日

鹿乃さやか——どういったスケジュールで一日を過ごしていますか? 鹿乃:歯医者として出勤する前の朝に配信をしたり、働いて帰ってきてから夜に配信しています。合間にYouTubeの動画編集をしたりSNSの更新をしたり……それで一日が終わる感じですね。動画編集は『Final Cut Pro』を使って歯科衛生士の子と交互で編集しているのですが、朝までかかることもあります。休みの日は動画編集のほか、被写体モデルとして撮影に行ったり、歯医者のセミナーに行ったりしています。 ——自分の時間がないくらい忙しくないですか? 鹿乃:でも、楽しいですよ。なにかやることがないと家で一日中ゴロゴロしてダメになるタイプなので。なにかに追われている方がいい。空いた時間で映画を観たり、お笑いを観たりしています。 ——活動を始めてから、職場の人たちからなにか言われたりしましたか? 鹿乃:患者さんにはバレていませんが、職場の人たちは応援してくれています。まだ多くの人には知られていないと思うし、職業も関係ないし、何歳から活動を始めても遅くないってことを証明したいので、もっといろんなところで活躍したいですね。  たとえば、医療系の番組や、ラジオやお笑いが好きなので、ラジオにも挑戦したいです。あとは演技にも興味があるので、いつかドラマなどで歯医者役もやってみたいですね。
次のページ
夢はカフェを併設した“コンセプト歯科”の開業
1
2
3
4
出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X(旧Twitter):@rizeneration

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ