多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、なかにはすぐに辞めてしまう新入社員もいるのだ。その理由は、いったい何なのか——。 　新入社員は入社すると、一般的にはまず研修を受けることになるが……。 　とある病院で清掃や受付業務、医師の補助業務を担当している山野美津子さん（仮名・30代）。新入社員Hは入社初日、さすがに緊張している様子だったが、先輩のアドバイスも素直に聞いており、良いイメージを抱いていたという。 「真面目で礼儀正しく、大人しい印象でした。すぐに辞めそうな雰囲気は全くありませんでした」 　だが、研修期間中に突然「退職させてほしい」と申し出たという。いったい、何が原因だったのか。 「新入社員は、いきなり業務を行うことはなくて、2週間ほどの研修期間があります。ただ同じ場所に立って、先輩を見ているだけなのですが。それに加えて、汚れている場所の清掃やトイレ掃除を行うことが新入社員の仕事でした」 　Hは、きちんと話を聞きながら、分からないことがあれば質問してくる。勤務態度に問題はなかった。遅刻することもなく、毎日始業時間15分前には仕事場に来ており、誰にも迷惑をかけることはなかったと話す。