「“米国株投資ブーム”が日本の国力低下につながる」と危惧されるワケ
「大資本VS脱成長勢力」という二軸の動き
崎本:金融の世界は、まさに生き馬の目を抜く世界ですよね。「こうあるべき」という理想論や甘い考えでいるうちに、ほかの人に出し抜かれてしまっては本末転倒かもしれません。馬渕さんは、投資の展望を考える上で、どんなことを大事にされていますか?
馬渕:先ほどのアメリカと中国の対立以外に、いま、世の中には二つの軸があると思っています。ひとつは時価総額資本主義や頭脳資本主義と言われるように、大きなお金をテコにして物事を動かす人たち。簡単にいえば、GAFAの人たちなんかがそうですね。この場合、頭のいい人が多い国が勝つ。一方で、資本主義経済の限界として、脱成長、脱資本主義というキーワードがあります。この軸が、いま若い世代にすごく支持を得ているんですよ。
崎本:いま伺った両者は、非常に相反するものだなと感じますね。
馬渕:そうなんです。多様性を大事にするマーケットがある一方で、有無を言わさない大きなお金を持つ人々が世の中を動かしているでも、この二律背反するものが交わっているのが、現代の株式投資です。
投資をする上では、この事実を理解できているかどうかが、すごく大切ですね。私自身、この事実と向き合ったとき、3日間くらい寝込むほどショックでつらかったのですが……。ただ、「この世の中は残酷だけど、今、実際にこういうことが起きているんだ」と理解した上で、ニュースを見るように心がけています。
「相反する矛盾」を飲み込むしかない局面もある
崎本:個人の利益と全体的な利益の両方を意識しながら、きちんと自分の生まれ育った国に、何か還元できるいい循環が生みだせればいいのですが。
僕が20代中盤の頃、ネオヒルズ族という言葉が流行したんですよ。その当時は、「六本木ヒルズに住むのがかっこいい」「日本は税金が高いからシンガポールに住んでみたい」という人が多かった。でも、僕は「自分のことだけ考えていればいいのか」と思ったんです。
たしかにこれからの日本で自分や家族を支えられるのかを考えたら、「資産を日本にだけ置いても意味がないんじゃないか」などと相反するモヤモヤした気持ちを抱えたこともありました。馬渕さんは、この矛盾とどう向き合っていますか?
馬渕:矛盾があることをまず理解して、その上で自分はどちらを取るのか。それとも、どちらも取らないのか。私自身も、この矛盾をいつも自分に問うようにしています。いつも矛盾と向き合うたびに「苦しいな」と思いますが、全部飲み込んでいます。
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