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サッカー日本代表「いびつなメンバー構成」に疑問…その理由を考察する

アントラーズから選出がないワケ

興行面では、「63638人もの観衆を集めた6月のブラジル戦」と同じようにはいかないだろう

 この選考基準を踏まえると、ひとつの疑問が浮かび上がる。現在2位の鹿島アントラーズからは誰も選出されていないということだ。森保監督は鹿島の選手を招集できなかった理由のひとつに「移籍」を挙げている。直前に上田綺世がベルギーのセルクル・ブリュージュへ移籍することが決まり、招集できなかったことを示している。  それでも2位の鹿島には1人しか候補がいなかったのだろうか。鹿島には10得点の上田に次ぐスコアラーがいる。現在7得点を挙げている鈴木優磨だ。鈴木は得点ランク6位タイにつけ、加えて8アシストでこちらはリーグ1位となっている。他にも、鈴木、水沼宏太に次いで5アシストで3位につける樋口雄太も、今回の候補になるには十分な活躍を見せている。  合流日となっていた17日に、前日のJリーグで負傷した武藤嘉紀の不参加が発表され、代わりとして岩崎悠人の招集が発表された。ここでも開幕戦の開催地である鹿島からは選出されず、合流に時間を要する鳥栖からわざわざ呼び寄せている。

招集に応じなかった可能性も

 鈴木に関しては、以前に森保監督との確執を報じられたこともあり、それが理由で招集されなかった可能性はあるが真相はわからない。しかし、本当に必要と思えば和解に乗り出すだろうことを考えると、理由は別にあるのではないだろうか。  あくまでも個人的な憶測に過ぎないが、鹿島は今回の代表招集に対して抗ったのではないかと考えている。出場もさせないワールドカップにも招集しないのだったら、チームを強化を優先し今回の招集には応じないことにしたのではないだろうか。  その疑念を持ったひとつの出来事がある。6月に行われたキリンカップ期間中に上田綺世が代表チームを離脱したことだ。上田はチュニジア代表戦を前にした6月12日に、ケガを理由に代表を離脱し鹿島へと戻った。実はその前日11日に行われたルヴァンカップで鈴木優磨が負傷したのだった。そして、18日に再開したJリーグでは、上田が出場し鈴木は欠場したのだった。こちらも真相はわからないが、出場できない代表チームに拘束されるならチームの危機を救うために呼び戻そうとした結果なのではないかと予想できる。今回も同様の思考に至ったのではないだろうか。  チーム一番のスコアラーの移籍が決まった鹿島は、少なからずチームを再構築する必要がある。E-1選手権の開催期間をチーム強化の機会にしたいと思い、中心選手の招集に対して抗った結果として誰も招集されなかったと、個人的には考えている。  実際に、今回招集されたメンバーでワールドカップ本大会のメンバーに招集される可能性があるのは、大迫敬介、谷晃生、谷口彰悟、山根視来ら最終予選でも招集されている選手と言っても過言ではない。選手らも薄々は気がついていることだろう。実質的にB代表で戦うことになるE-1選手権は、興行以外の意味を見出しにくいものとなっている。  しかし、最近の日本代表戦の観客数から考えると、興行としても結果は微妙になりそうだ。ワールドカップまでのわずかな強化機会ではあるが、思うように招集できない現状を踏まえると、思いきってパリ五輪世代の強化の機会として大会の意義を見出したほうがよかったのではないだろうか。  それでも招集された選手にとっては、ワールドカップ行きが0になったわけではない。誰しもが認めるほどの活躍を見せれば、選出される可能性はある。だから、選手たちにはあきらめずに良いプレーを見せてくれることを望む。 <文/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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