恋愛・結婚

“初恋の相手”と久々の再会、デートのつもりが「宗教の勧誘」で頭がパニック

冷静に対応するも、心中は……

横浜の夜のデート「そこからは、その宗教がどれだけ素晴らしいか、二人がかりの説得です。普通だったら、戸惑うところだと思います。ただ僕は高校時代から新興宗教に興味があって、それ系の知識を持っていたんです。時代的に、霊感商法も流行っていましたし」  知識があり、ディベートも得意だった塩田さん。冷静にエミたちの話を聞きつつ、「あなたたちの考えは分かったけど、自分はこういう考え方だから同意できない」と、一つひとつ反論していったという。 「ディベートでは基本的にムキになっちゃいけないし、『この人は勧誘しても無駄だ』って思わせなきゃいけないんですよ。相手の信仰を論破するのが目的ではないので。エミがその信仰を持っていることを否定する気にはなれなかったし。でも正直、気持ちはめちゃくちゃしんどかったです」  塩田さんの心をえぐったのは、勧誘そのものよりも、あの頃と変わらないエミの姿だった。

「これは俺の初恋だった」リアルな恋愛感情を実感

「明るくて社交的なところはそのままなんですが、“信仰”を持った人特有の頑なさもあって……でも勧誘の合間合間に昔話を挟んでくるから、昔好きだったところがチラつくんです。けたけた笑う感じとか。目の前に座っているのは、好きだった子の残骸なんだって。それがきつかった」  感情の揺れを悟られないよう、必死にポーカーフェイスを貫いた。一通り時間が経ったところで、彼女たちは勧誘を諦めたのだろう。その場はお開きとなった。  別れ際、エミは昔と変わらない笑顔で、「あの頃は楽しかったね」と告げたという。 「その一言が、心にドッときて……彼女の家庭環境が複雑だったのは知っていたから、会えなかった10年に何があったのかって考えちゃって。何かしてあげられたんじゃないか……みたいな気分にもなりました」  帰り道、やり場のない怒りや物悲しさをぶつけるように、道々の電柱をガンガン蹴りながら歩いた。それでも、再会できた事実だけは嬉しかったそうだ。 「会えて嬉しかったのは嬉しかったんです。エミに対する想いは、子供の頃の淡い思い出に過ぎなかったから、それまでは凄くぼんやりしたものだったんですね。それが、会って、喋って、表情や喋り方を見て、『あ、俺この子のこういうところが好きだった。これは俺の初恋だった』って感じたんですよ。だからこそダメージがあった。リアルな恋愛感情が実感として出てきた瞬間に、崩壊してしまったんです」
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「子供の頃に告白しておけば……」
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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