更新日:2022年12月03日 10:56
スポーツ

三笘からのゴールは「神様の後押し」か。日本代表に漂う“日韓大会の雰囲気”

VAR判定の2点目は神様の後押し

日本代表

グループ1位で突破した日本代表。世界中から注目を集めることになった

 劣勢のなか選手たちは任されたタスクを着実に遂行して我慢と忍耐の末に勝ち取った結果で、実直な日本人らしい試合だった。また、選手やスタッフ、そしてファンやサポーターが一丸となって勝ち得たもので、森保一監督が戦前から宣言していたとおり「総力戦」の賜物と言える内容だった。  大きな勝因のひとつは、試合中にマークを再確認して修正できたことが挙げられる。試合開始から3バックで臨んだわけだが、試合序盤はどの状況で誰をマークするのかが曖昧で、特にガビとペドリへの対応で迷いが生じていた。しかし、試合中に選手らが声をかけ合い前半のうちに修正。センターフォワードのモラタには吉田麻也が、インサイドハーフのガビとペドリには谷口彰悟と板倉滉がつくことを整理できてから守備が安定した。相手にボールを保持される状態であっても、危うい場面をつくらせなかった。  相手前線へのパスコースをしっかり防げれば、前線からプレッシングに行くハイプレスが機能する。良い守備が良い攻撃につながるという典型的な展開をチーム全体で成し遂げたのだ。  もうひとつは、テクノロジーが味方となったのが大きかった。2点目のアシストとなる三笘の折り返したシーンだが、VAR導入前であれば10人中9人の審判員はアウト・オブ・プレーとジャッジするのではないかと思う。正確な映像が撮れたとしても最終的に判定を下すのは審判員だ。真上からの正確な映像もあったが、ボールが出たと判定されても文句は言えないほどギリギリだった。おそらくVARと運がなければ、生まれなかったゴールだろう。それを踏まえると、そろそろ「新しい景色」を見てこいと、神様が後押ししているように感じざるを得ない。

クロアチア戦に向けての修正点は?

 とはいえ、次に対戦することになったクロアチア代表も強敵だ。そのためには、しっかりと修正しなければならない点がある。それはマークの受け渡しだ。先制された失点シーンが、まさにそれを物語っている。左サイドから押し込まれて右サイドへ展開されたことで、日本守備陣の立ち位置がずれる。相手のバックパスで吉田が板倉へ指示をし、立ち位置の修正とマークの受け渡しを行おうとした。その瞬間にモラタにマークを外され、そこへ正確なボールを送り込まれた。  そもそも、相手が前向きでボールを持っているときにマークの受け渡しは行うべきではない。トップレベルはその隙を見逃さない。ましてや、世界最高クラスの中盤と言われるモドリッチらは、もっとシビアに狙ってくるだろう。  それ以外にも最終ライン際に位置してボールを受けるインサイドハーフへのマークも曖昧で、センターバックがマークするのか、中盤の選手がつくのかで対応しきれていなかった。それぞれのタスクを声をかけ合いながら、試合中に修正できていたところは最高の出来だったのだが、1点が命取りとなる決勝トーナメントでは最初からしっかりと確認してはっきりとさせておかなければならない。  これは攻撃面でも同様のことが言える。ボールをつなぐべきか、前線のスペースへ送り込むのかなど詳細なことをチームで意思疎通できていない場面が見られる。そういった細かい部分をはっきりさせていくことで、精度が上がり得点へとつながる。  敗戦したコスタリカ戦でも見られたが、それぞれのタスクがはっきりしないまま試合に臨む癖が今の日本代表にはある。事前からもっと詳細にタスクを確認し合い、穴をなくして決勝トーナメントに臨んでもらいたい。  今回の勝利ではっきりとわかったことがある。それは神様が日本代表の味方になってくれているということだ。2002年は自国開催で決勝トーナメントも勝ち上がれるという雰囲気があった。そのときの雰囲気に似ているように感じるが、今回は運に恵まれている。そして、もちろん勝ち上がれるだけの力も備えてきている。さらに、ドイツとスペインに勝ったことで世界のサッカーファンも後押ししてくれている。  こうなったら、国民全員が一丸となって「新しい景色」を見に行こうではないか。決戦の日は日本時間12月5日の24時から。みんなの声援をカタールにいる日本代表一団へ送り届けよう。 文/川原宏樹 写真/日本雑誌協会
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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