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タモリの「新しい戦前」発言にネットで反響。良識派タレントと神格化する危うさ

「神格化」されてしまったタモリ

 昨年3月『タモリステーション』(テレビ朝日)のウクライナ特集で2時間に渡り沈黙したところ、それが“平和への祈り”と解釈される事態に。これに対し「週刊文春」(2022年3月31日号)がタモリに真相を聞いたところ、「大した理由はない」「畑違いで」と回答。なのに、なぜか過剰な意味付けをされてしまった。  つまり、“私たちの愛するタモリ”には理知的なリベラリストであってほしいとの勝手な願いを託してしまっているのではないでしょうか。それゆえに、たとえ道徳的に正しいとしても自分たちの都合のいいように利用してしまう傾向は、SNS社会にありがちな現象だと言えます。

2018年にアメリカで起きた同様の出来事

 同じようなことが2018年にアメリカでも起きました。  トランプ大統領(当時)を支持していたカニエ・ウェストがホワイトハウスを訪れたとき、彼の政治姿勢を批判するためにある一遍の詩が拡散されたのです。  それはカナダのシンガーソングライター、レナード・コーエン(1934-2016)によるもの。カニエによる“俺はヘンリー・フォード、ミケランジェロ、そしてピカソだ”との傲慢な宣言を否定し、コーエンが“我こそはピカソ”とやり返すフレーズから始まります。
カニエ・ウェスト

カニエ・ウェスト 写真/BANG SHOWBIZ

 その後、コーエンはカニエの存在を「クソみたいな時代における途方もないほど嘘っぱちの変革」(Of the great bogus shift of bullshit culture 筆者訳)と喝破。  これをトランプに入れ込むカニエを批判するために良識派が持ち出したのですね。“あの偉大なレナード・コーエンだってカニエを批判しているではないか”と。
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コーエンの詩はむしろカニエを称賛するものだった?
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