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恒岡章さんが51歳で死去。ハイスタが音楽シーンに残した「大きな足跡」

ど真ん中をストレートでぶち抜く潔さ

 ハイスタはそのタイミングで登場しました。ど真ん中をストレートでぶち抜く潔さ。いまでもテレビ番組のBGMで流れる「Stay Gold」はエバーグリーンな輝きを放っています。  一筆書きのような勢いと日本人が大好きなメロディとコード進行が同居している。英語の歌詞でもスピリットはジャパニーズだった点に揺るぎないオリジナリティがあったのだと思います。  強いビートと歌えるメロディ。ある種子供じみたシンプルさを徹底したという点で、ハイスタはアメリカのパンクバンド、ラモーンズに似ているのかもしれません。  ラモーンズは自らをベイ・シティ・ローラーズ(スコットランドのポップロックバンド。「サタデー・ナイト」「二人だけのデート」などのヒット曲で知られる)の後継者だと信じて、予備知識や小難しいこと抜きで誰もが楽しめるポップソングを目指していました。  ハイスタの衝撃もその点に集約されるのではないでしょうか。彼らもまたベイ・シティ・ローラーズをカバーしていたことを思えば、音楽的にもポジション的にもラモーンズを意識していただろうと想像するのです。

インディーズから口コミで人気を獲得

 そしてハイスタを語る上で欠かせないのがインディーズであることです。今のようにスマホはおろか、パソコンすら普及していない時代にほぼ口コミだけで人気を獲得し、ついにはミリオンセールスを達成するストーリーに誰もが驚きました。  一般に新しい音楽を売り込む際は大資本が巨額の広告費を投入し、ラジオやテレビなどで流れる回数を増やしてチャート上位に食い込ませるのが常套手段だからです。  日本に限らず、アメリカでもケイティ・ペリークラスのアーティストでさえ、ラジオのチャート番組で曲を流してもらうために25万ドル(現在のレートでおよそ3300万円)ほどを投入しなければならなかったのだそう。額は違えど、日本も同じようなビジネスモデルが出来上がっています。
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「慣例を打ち破った」というインパクト
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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