「授乳時に嫉妬する旦那」「父親が誰か分からない」…助産師が見た、衝撃現場の数々
死や老いと向き合わざるを得ない病院という場所。病棟のなかにあって唯一、産科だけは、生命の誕生に立ち会うことができる。産科の実務は当然、産婦人科医が主導するが、妊産婦の身体的・精神的ケアから分娩、産後まで総合的に支えるのは助産師である。
看護師約130万人のなかで、助産に特化した訓練と試験を通過した者だけが手にする資格で、その数は約4万人と極めて少数精鋭。彼女たちの話に耳を傾けると、神秘的かつ感動的なストーリーとは真逆の、禍々しくも恐ろしい人間の本性の産声もまた聞こえてくる。
関東地方在住の助産師・松山美樹さん(30代・仮名)は、病院という場所を履き違えた“モンスター家族”に遭遇したと話す。
「もう慣れましたけど、妊婦のパートナーがやたらと高圧的というのはよくあるパターンです。コロナ以前は面会も自由でしたから、タンクトップに入れ墨という出で立ちで現れ、『うちのが痛いって泣いてる、なんとかしろ』なんて凄むのは多々ありました。ナースステーションで一番笑ったのは、『◯◯って助産師をうちの専属にしたい』って言ってきた輩ですね。そういう指名制のお店ではないので(笑)」
「違う旦那さんですが」と前置きして、非常識なパートナーの存在も明かしてくれた。
「奥さんが授乳すると不機嫌になったり、ひどい場合、キレる旦那も見ました。『俺の女なのに』ということなんでしょうけど、赤ちゃんにとって大切な栄養摂取なので、くだらない嫉妬を差し挟む余地があると思っていること自体、おこがましくて呆れます。それを受け入れたり、謝ってしまう気弱な奥さんも見ていて、『なんだかな』と感じます」
タンクトップに入れ墨のパートナーに凄まれることも
授乳すると「キレる旦那」
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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