エンタメ

広末涼子、かつて思春期の男子を骨抜きにした“魔性の魅力”。今こそ『MajiでKoiする5秒前』セルフカバーのタイミング?

「MajiでKoiする5秒前」の計算された“ダサさ”

 このイメージの流れでリリースされたのが、竹内まりやが作詞、作曲を手掛けたデビューシングル「MajiでKoiする5秒前」(1997年4月15日 オリコン最高2位)。 「恋はあせらず」(シュープリームス)のリズムに「恋するふたり」(ニック・ロウ)もしくは「JUST A MAN IN LOVE」(桑田佳祐)の黄金コード進行が乗った王道ポップス。時代錯誤的な古臭さが、デジタルでダンサブルな小室サウンド全盛の時代にかえって新鮮に響きました。  この万全に準備された“ダサさ”だからこそ、広末のボーカルに漂う暴力性が際立ちました。当時、高校の同級生がラジオから録音した音源を聞かせてもらったときに、“だいぶ声がしゃくれてるな”と感じたのを覚えています。つねに母音が反発しているのです。  これがたとえば上白石萌音や高畑充希だったら、もっと無難に歌うはずです。レシピ通り、分量通りに仕上げた焼き菓子のような味わいに仕上がるでしょう。  広末の歌はそれだけでは済まない“アク”があるのですね。

爽やかなラブソングが“崩壊”する発音の強さ

 その違和感は2枚目のシングル「大スキ!」(1997年6月25日リリース オリコン最高1位)で確信に変わります。 <アイ アイ アイ アイ>×3。計12回連呼される“アイ”は破壊的でした。爽やかなラブソングが、音響的に崩壊していく。短いスパンで繰り返される粘着性の母音はパンキッシュですらありました。  どんなに美しいメロディや愛らしい歌詞も無力になってしまう絶対的な発音の強さに圧倒されます。
次のページ
「芸能活動に対する葛藤」が音楽にも?
1
2
3
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ