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「上履き」を子供に履かせてはいけない理由。成長とケガを予防するベストな選択とは

底が曲がらない靴も危険

また、これらのメーカーは共通して底も「曲がるべきところで曲がらない靴」をつくっています。厚底のゴムが弾んで動きやすそうに見えても、大人が力を入れても底が曲がらないものがあります。上履きのように「どこでも曲がる靴」も問題ですが、逆もまたしかりで、「曲がるところで曲がらない靴」も危険です。 具体的には「指が並んでいる列の手前のライン」、ここが曲がるべきところです。裸足をイメージするとわかりやすいでしょう。靴もそこで曲がらなければどんなメーカーでもアウトです。子供は確実にケガをします。 店に行って実物を手にし、「①インソールが外せるかどうか」「②曲がるべきところで曲がるか」の2点に注意してください。 どうしてもネットで買わざるを得ない場合は、「大人の靴をそっくり縮小したもの」は避けましょう。とにかく見た目さえ似ていれば売れるという販売戦略なので、ほぼアウトです。もうひとつ、平成から販売が続く「光る底」。シンプルに子供が楽しむのでよく売れていますが、これも底を光らせるための構造上、まず曲がりません。 目立つので街中でよくみかけますが、同じくらい「こける風景」も目にします。底が曲がらないということは、歩いている最中に足を突然つかまれるようなものなので、物理的にこけてしまいます。電車の乗降時などでみかけるとこちらまでヒヤッとします。 防犯を謳っていることもありますが、それなら「音が鳴る」靴のほうがベター。こちらは歩きを邪魔しない構造なので、安心して購入できます。

樹脂系のつっかけ靴を履いてはいけない

最後に、もっとも避けるべきものは樹脂系のサンダルやつっかけ靴です。エスカレーターでは、「樹脂製の靴などは巻き込まれるおそれがあるので」とエンドレスに警告を発しています。筆者も百貨店に勤務していたときには、エスカレーターの巻き込まれ事故に幾度か遭遇しましたが、大人でも容易に巻き込まれます。 実際、ニュースにならないだけで毎年かなりの事故が発生しているはずです。だからいまだに、アナウンスがなくならないのでしょう。足を大けがするだけでなく、エスカレーターやエレベーターの賠償問題にもつながりかねないので、本当に考えものです。 樹脂系サンダルやつっかけ靴はそもそも足の形はしているものの、実はまったく足を固定できず、大人ですら脱げずに歩くのは困難です。もともと医療現場などで「すぐ履けて、立っていても疲れない」というコンセプトの設計なので、あれを外履きとして歩いたり走ったりしてはいけません。 筆者の子供には思春期がくるまでは、ニューバランス、アシックス、ミズノ、イフミーを中心に選んでいました。子供靴は大人用と同じくらいコストがかかります。小さいからといって極端に材料費が安くなるわけではなく、逆にサイズが小さいぶんつくりづらくなるため手間がかかり、儲からない。先述したメーカーはほとんどボランティアで子供のための靴をつくっているようなものです。生産コストを知ってる身からすると本当に頭が下がります。 しかし皮肉なことに「足のことを考えない子供靴」はつくるのが簡単なのでメーカーにとって大きな利益になります。危険な靴は今後も販売され続けるので、くれぐれもご注意ください。 文/シューフィッターこまつ
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ
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