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1年目から“手取り月28万”…「余程のことがない限り入隊できる」海上自衛隊の世界

1年目から“手取り月28万”

「教育隊には嫌われ役の鬼教官みたいな人もいましたが、僕が入隊した頃はハラスメントに対する意識や処分も厳しくなっていて、鉄拳が飛んでくるといったことは周りではありませんでした。新卒より年上でも変にオジサン扱いされるようなこともなかったですね。典型的な縦社会なので、最初はひたすら下っ端として扱われるだけでした。昔は隊員同士、バリカンで頭を刈る習慣もあったそうですが、それも『坊主の強制はパワハラ』ってことで禁止されていました」 経済的な事情や動機で入隊する若者は多く、上田さんの同期にも片親や両親が共にいない環境で育った苦労人も少なくなかったそうだ。任期制自衛官の初任給は約18万円。部隊勤務が始まると諸々の手当が加わり、1年目から手取りで月28万ほどはコンスタントにもらえていたと語る。 「陸上は手当がほぼないので最初は18万円ほどで寮生活することになりますが、海自は出航した回数や期間に応じて、手取り分の33~40%が上乗せされました。船に乗ると半年くらい帰宅できないこともありますが、メシもついてくるし、海自と航自は待遇的に陸自より恵まれているイメージが一般的にあると思います

事件に対する驚きはなかった

冒頭で触れた今年6月の事件で凶器となった89式小銃は、自衛隊で制式化されている自動小銃。上田さんも実弾の射撃訓練で使ったことがあるという。 「下っ端から上官まですべての自衛隊員は年間23発の実弾を撃つ決まりで、必ず射撃訓練はしています。3、4キロとけっこう重たくて、肩に押し当てて撃たないと反動の衝撃で骨折っちゃうこともあるらしいです。ただ、多少の練習をすればそれなりに的に当てられるような、扱いやすい銃だと思います」 実弾の訓練射撃は姿勢などを修正するためにまず3発を撃ち、その後、本試験で的を狙い20発を撃って点数を出すという流れ。一日100人前後まとめて訓練することもあり、当然その訓練場には人数分の実弾が用意されるという。 「海自や空自のほとんどの隊員は年間でその23発しか実弾は撃たないんですが、陸自は実弾を扱う訓練の回数も弾数も圧倒的に多いはずです。教育隊の施設内に銃や弾を保管・管理する場所があったんですが、同期の元鍵屋の人は、そこの施錠を『緩い』と言っていましたね。その意味では事件に対する驚きはなかったというか。その気になれば簡単に起こせる事件だと思いました
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“外の世界が怖い”自衛隊員は多い
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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