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1年目から“手取り月28万”…「余程のことがない限り入隊できる」海上自衛隊の世界

“外の世界が怖い”自衛隊員は多い

「自衛隊は何かと共同生活を強いられる逃げ場のない環境で、もちろん嫌いな先輩とも必ず顔を合わせて寝食をともにする。そうするとやはり精神的にはくるものがありますね。自衛隊は自殺率が高いことで有名で、私の同期でも一人、出航中に20歳くらいの子が自殺しています。とくに自衛隊でしか働いた経験がない人は『自衛隊以外の仕事で生きていく自信がない』『外の世界が怖い』という人が多く、普通の人より職歴が多い僕もよく相談されました」 隊員のメンタルヘルスをケアする体制はまだまだ途上段階らしく、実際にそうした専門の窓口へ相談する隊員は現状では少数派とも話す。 「私が乗っていた船では脱走者が出て、乗組員総出で捜索したこともありました。しかも、脱走防止の観点からだと思うんですけど、自衛隊は脱走者の捜索にかかった費用を家族などに後から請求するんですよね。現実的にそんな高額の請求もしないとも思いますが、交通費などの領収書などはすべて上司に提出しました。そんなこともあってか、イヤイヤ働き続けている隊員はやたら多かったです」

「無駄な仕事が多い」と思っていた

人間関係の悩みもさることながら、何かと規則が多く職務上さまざまな自由が制限される自衛隊。自分の意見を言えない空気も強く、上田さんの肌には全く合わなかったそうだ。 「自衛艦旗を掲揚して、下っ端の人間が船上に集まって敬礼する儀式が毎朝8時にあったんですが、人手と時間かけてまでやる意味あるのかわからない、無駄な仕事が多かったです。数年に1回、半年くらいかけて船の錆を落としてペンキ塗り直す作業を延々やるんですが、その作業もずっと『無駄だなぁ』と思っていましたね。 横須賀でいろんな国の海軍の様子を見ることができたんですが、自衛隊よりずっと自由そうだなとは感じました。私服っぽいTシャツ姿で船の上を彷徨いたり、酒飲んだりしていて……。他の海軍は少しくらい船に錆があっても気にしないし、仰々しい朝の旗揚げも他国の船では一度も見たことないです。どんな国の軍艦でも旗揚げはやるんですけど、たいていは誰も見ていない中でテキトーに座りながらヌルッと揚げています」
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休日の息抜き、定番は「飲む・打つ・買う」
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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