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5000円でお葬式をお願いされても断らない。檀家信徒数「26軒→3000軒以上」を実現した住職の改革

相談されたことは絶対に断らない

鈴木住職天明寺の運営を立て直すうえで急務だったのは、檀家信徒の数を増やすこと。そこで鈴木氏は、「お願いされたことは拒まないでなんでもやる」と決めて、相談に来る人をすべて受け入れるようにしたそうだ。 「まずは、26軒の檀家信徒さんとの関係性をより密にするために、なるべくご自宅に足を運ぶにようにしました。そのうえでなんでも相談に乗るようにしたんです。 それから徐々に、檀家信徒さんや葬儀屋さん、石屋さん、仏壇屋さんが、『天明寺の住職にお願いすれば、なんでも引き受けてくれる』と口コミで広めてくれるようになりました」 人々の信頼を勝ち取ることで檀家信徒の数は徐々に増加。’08年に境内に墓地を構えたことも追い風となり、寺院運営は軌道に乗っていく。だが、相談者の中には無茶なお願いをする人も……。 「5000円でお葬式をしてほしいとお願いされたこともあります。確かに相場よりもかなり安いですが、お話を聞いたところ、生活が貧窮したなかで納めてくれた大切なお布施でした。ですから、たとえ5000円でも請けることにしました」 サービスを低価格で提供すると、その後も安く買い叩かれてしまいそうだが、鈴木氏は「そんなことはありません」と否定する。 「実は、当初は私も不安だったんです。無茶なお願いをする人がたくさん相談に来たらどうしようって(笑)。でも、常識の範囲内で相談してくれる方ばかりでした。5000円で葬儀をお願いされた方も交流が続いていて、生活に余裕ができてからは、お布施を多く納めてくれるようになりました」

独自のイベントを企画してお寺を人の集まる場所に

檀家信徒との関係性を密にするほかに、自分の寺院がどんな場所なのか、情報を発信して知ってもらうことも重要だと鈴木氏は指摘する。 「天明寺をアピールする一環として、“白菜加持”という行事を考案しました。最初は、4~5人の方が参加する小さなイベントでしたが、いまでは1日で500人もの方が集まってくれる恒例行事になっています」 さらに、仏像彫刻が趣味のテノール歌手・秋川雅史氏が自ら手彫りした辯才天を天明寺に奉納したことをきっかけに、音楽と仏像を語る“辯才天(べんざいてん)のつどい”を不定期で開催。白菜お守りや白菜不動くんといったオリジナル商品やキャラクター作りにも挑戦し、積極的に天明寺をアピール。そして鈴木氏はYouTubeデビューも果たす。 「私はITリテラシーが低いですし、元来は真面目な性格なので、正直抵抗もありました(笑)。でも、普通にお話しても視聴者にはなかなか刺さりません。機材の準備や配信方法は家族や知人に協力してもらい、私は演者に徹することで、YouTubeの活動も精力的に続けています。 新しく檀家信徒になってくれた方の中には、私が企画した行事に参加した方や、YouTubeを観たという方も多いので、やってよかったなと思います。今後も続けていきたいですね」
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改革に挑戦するなかで思わぬ苦労も…
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