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ジャニーズ事務所が注目を集める今、見ておきたい戦慄のドキュメンタリー番組

ジミー・サビル Jimmy Savile: A British Horror Story Part 2. Image of Jimmy Savile in Jimmy Savile: A British Horror Story Part 2. Cr. Courtesy of Netflix © 2022

 9/7(木)に行われたジャニーズ事務所による記者会見。創業者だった故・ジャニー喜多川による、長年にわたるジャニーズJr.への性加害の事実を事務所側も認めた形となったが、被害者の救済ならびに補償、忖度という形で彼を放置し続けてきたメディアの責任など、私たちがそれぞれの立場で取り組まなければいけない問題は山積している。  今から1年前、Netflixで配信された『ジミー・サビル 人気司会者の別の顔』というドキュメンタリー番組がある。2011年に84歳で死んだイギリスの人気司会者であるジミーが、実は裏で少年少女に継続的な性加害を行っていた事実が次々と発覚。番組では彼の行いを、さまざまな証言者の言葉を交えながら検証していく。今回の事件とも似通う部分のある本作について書いたレビューを改めて紹介することで、この問題について考える一助になれば幸いだ。

イギリスを舞台に繰り広げられたおぞましい性加害の実情

 奇抜なファッションと巧みなトークで老若男女を問わずイギリス国民から絶大な人気を誇っていたジミー・サビル。ラジオDJ、テレビ番組の司会者、慈善活動家などさまざまな顔を持っていた彼だが、その裏には知られざるもう一つの顔があった。そんな彼の“真実”を克明に追ったドキュメンタリー『ジミー・サビル 人気司会者の別の顔』がNetflixで配信中である。  国民的人気音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』の司会を20年務めたサビル。多忙にも関わらず病院に通い奉仕活動を続け、マラソンで国土を横断するなど、その人気は瞬く間に膨れ上がっていく。彼が再建に奔走した病院の患者は感謝の言葉を述べ、時の首相サッチャーやチャールズ皇太子、ダイアナ妃とも親密な関係を構築。ついには「ナイト」の称号まで手に入れる。  だが晩年、衝撃的な事実が次々と暴かれていく。なんと彼は50年以上にわたり、主に子どもに対して数百件の性的虐待を行なっていたのだ。勇気を振り絞って告白する女性、追求を続けるジャーナリスト。彼らによって隠された真実が明らかになっていく……。

「見てみぬふりをしない」。性加害だけではなく、すべての事象に当てはまる自戒

 サビルに限らず、私たちの誰もが多かれ少なかれ二面性を持っていると言ってもよいだろう。さまざまな関係者の証言にもあるように、実際のところ彼は個性的でユーモラスで人あしらいが抜群に上手だったに違いない。一部の人にとっては彼は永遠にヒーローで、尊敬すべき善人なのである。  しかし、心に闇を抱えることと、それを発露することはまったく別の話だ。私たちがこのドキュメンタリーから真摯に受け止め、胸に深く刻まなければならないのは、どこかで誰かが心と体を傷つけられている事象に対し、見て見ぬふりをしない、ということだ。 ※本稿は週刊SPA! 2022年5/3・10号「カルチャーフェス」にて掲載されたものです。 文/中村裕一
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter
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