なぜ「元死刑囚」なのか
――「死役所の職員は元死刑囚」という設定も最初は不思議に感じました。
あずみきし:最初は自殺で亡くなった方を職員にしようと考えていたんですが、自殺者数は年間2万人。作中の設定としても多すぎるな……と。日本で1日に亡くなる方はだいたい3000〜4000人と言われているんですが、その事務手続きを捌ける人数で一番少ない“死因”を考えた結果、たどり着いたのが「元死刑囚」だったんです。
――さまざまな人生と向き合う元死刑囚たち。彼らが何を思い、どう行動するのかというところで、ストーリーに深みが出ますよね。そもそも、人の死に焦点を当てた漫画を描きはじめたきっかけは?
あずみきし:子どものころから「もし自分が死んだらどうなるんだろう」ってよく考えていたんですよね。お葬式でどんな人が泣くんだろうかとか、お気に入りのクッションを棺に入れてもらおうとか。
『ラスト サムライ』という映画で、ガトリングガンで撃たれた侍がバタバタ死んでいく場面があるじゃないですか。そこでも「この人たちにも家族がいて、それぞれ人生があるんだよな……」と、ついつい考えてしまいます。
――アイデアはどういった時に浮かぶものですか?
あずみきし:日常で見聞きした話を思い出したり、ニュースを見たりして捻り出しています。あとは担当編集さんからもらったヒントを膨らませていくみたいな。悩む時は本当に悩みますね。毎回必死です。
――社会問題を扱う類の話では、かなり下調べをされている印象を受けます。
あずみきし:本から知識を得ることが多くて、題材を決めたら必ず何冊か読むようにしています。また、生活保護のエピソードを描くときには、生活保護の申請用紙を実際にもらいに行ったこともありますね。
――ディティールへのこだわりも10年間読者から支持され続けている要素のひとつなのかなと。各エピソードの最後にその回の視点キャラの人生を想起させる写真がたくさん出てきますが、本筋とは関係ないところまで造形を詰めているんですか?
あずみきし:この人はこの時代をこんなふうに過ごしたんだろうな……と想像しながら描いていて。アルバムのような形でそのキャラの人生を俯瞰的に垣間見せることで、読者の方もより物語に入り込めるようになるかなと。
ただ、毎回苦労して描いています(笑)。各年代のファッションとか調べるのが大変で、実際に祖父母の写真の服装を参考にしたり、友達が送ってくれた子供の写真を構図や表情の参考に使わせてもらったり。あの1ページに丸一日かかることも普通にありますね。
<取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):
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■開催日時:2023年10月7日(土)13:00開始
■場所:芳林堂書店高田馬場店8Fイベントホール
■対象書籍:『死役所』24巻 あずみきし(定価:税込726円)
※上記対象書籍を予約・ご購入いただいたお客様がイベントにご参加頂けます。
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