繁華街に集まる若者たちは、一昔前のヤンキーや不良とは真逆の気質
かつては栄のドン・キホーテ前に集まっていた名古屋のキッズたち。今はテレビ塔方面に散らばっている/写真:フォトAC
サポートセンターの警察官や職員が連れてくるのは、家庭内暴力や引きこもり、不登校、親からの性被害などが原因で、非行に走ってしまった若者たちばかり。
一昔前のヤンキーや不良とは、気質が真逆なんだとか。
「私が立ち直り支援を始めた頃(12年前)は、グループでわいわい騒ぐ子たちが多かったです。数人で集まって、万引きをしたり深夜徘徊をしたり。今の子は表で問題行動を起こさず、内側にこもっている子ばかりです。自分の状態を、あまり人に見せたくないのかもしれません。外で非行に走るような目立つ子は、その時点で手に負えない状態になっています。支援の手が届く前に、いきなり逮捕されて少年鑑別所に入ってしまう」
昔の不良たちはコミュニティ内で上下関係を築き、仲間とつるんで暴れることで、家庭内の不満などを発散していた。
トー横などに集まる少年少女たちも、一見グループ行動をしているように見えて内実は違う。筆者が知る範囲の話だが、その場限りの希薄な人間関係に留まっているパターンがほとんどだ。統率が取りにくい烏合の衆という表現が近いかもしれない。
「
今の若者たちは個々で動いていて、それぞれの考えを持っています。ところが個人だと臆病なのに、繁華街に集まってひとつの塊になると、手に負えなくなるほどの行動をしてしまう。家や学校に居場所がないからこそ、自分の存在価値を示すために悪いことをしてしまうんですよ」
立ち直り支援で提供している畑
繫華街のコミュニティしか自分の居場所がない者たち。本来ならば行政が手を差し伸べて改善すべきだが、「
警察にも限界がある」と今泉さんはこぼす。
「非行に走る子たちの気質の変化から、
今までのやり方が通用しなくなりました。昔はいわゆる『熱血先生』のような接し方でコミュニケーションを取れていたけど、今は個々人に合わせて対応を変える必要があります。そうなると、警察も人手不足で対応しきれません。僕ら補導員・保護司は警察組織のサポート役なので、警察と同等のことはできない。だから警察にしてもサポートにしても、限界があるのも事実です。警察本部が少年サポートセンターを立ち上げた経緯には、そういった背景も関わっています」
そのような現状のなか、今泉さんが行っている農業立ち直り支援では、「
居場所作り」も兼ねているそうだ。
「立ち直り支援のやり方も、昔とは変わってきています。自分の殻に閉じこもっている子が多いので、前みたいに参加者全員でワイワイやるって形ができなくなってしまった。畑に来てもスマホをいじってばかりの子もいます。話し方ひとつ取っても、その子に合わせて考えないといけない。保護司の立場で子供の顔色を伺うのはよくないけど、少しでも叱るような言い方をしてしまうと、次から来なくなってしまいます。こちらが手取り足取りフォローしないと何もできない子も多いですね。だけど、農作業をやってみると彼らの中で何か手ごたえがあるみたいで、苗を植えた子は収穫にも来てくれますよ」
収穫した夏野菜
最初は話しかけても返事をしない子であっても、心を開くことができたならば良い方向へ改善されていくのだとか。一方で、犯罪を犯してしまった少年たちへの支援は、手が届かなくなりつつあるという。
「鑑別所や少年院から帰ってきた子たちに対しても、さまざまな矯正教育をしてきました。たとえば、公園などの施設を掃除させるといった社会貢献活動をさせたり。コロナ禍前は毎月必ず一人や二人は参加していましたが、この3年は彼らからほとんど連絡がありません。どうなっているのか心配です……」