更新日:2024年01月18日 18:52
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「島民の平均年収は1100万円」…高額納税者たちが“瀬戸内海の離島”に続々と移住してくるワケ

「移住者と地元民の衝突」はこうして起こる

しかし、全国各地で移住者と地元住民とのトラブルや衝突は、枚挙にいとまがない。こうしたことが起こってしまう背景には、次のような状態があるといずたに氏は述べる。 「移住者が地方のコミュニティに入って『こっちの方が合理的ですよ』『今の時代、そのやり方は合いませんよ』と、良かれと思って指摘してしまうケースが多いです。地元の人にしてみれば、毎日のルーティンや馴染みのある文化を否定され、新しいものに塗り替えられようとすると、拒絶反応が起こるのは当然のこと。このような事態を招く背景には、総務省が過疎地域の活性化を目的に、移住者に『地域おこし協力隊』という肩書きを付ける場合もあるので、使命感が生まれて地元のものを変化させようとしてしまうんでしょうね」 たしかにグローバルな視点や時代の潮流を見れば、移住者の意見が正論なのかもしれない。しかし、それを一足飛びにやろうとすると失敗すると同氏は話す。

「変化を喜んでもらう」ことが大事

みかん鍋

みかん鍋。熱々の鍋に、焼いたみかんが皮ごと浮かんでいるインパクトの強いメニューだ

周防大島ではどのようにして地元民が移住者と一緒になって楽しく暮らせる地盤を作り、移住受け入れに必要な「人」の魅力が形成されたのか。いずたに氏は、自身の活動を次のように例えた。 「例えば、毎日サバの味噌煮を食べているようなお年寄りに、いきなりハンバーグを食べさせようとすると拒絶反応を示すはず。だから一旦、ブリの照り焼きを食べてもらうんです。遠回りのようですが、まずは『変化するのも悪くないな』と気づいてもらって、新しいものを受け入れるメリットを感じてもらうことから始めるんです」 『北風と太陽』のような話で、なかなか根気がいりそうだ。実際に、いずたに氏と同時期に周防大島に移住して来た男性は、数年間かけて周囲の意識を変化させていったという。 「この島はみかんが名産なんですが、その男性が『ぶどう畑をやる』と言い出したんです。みかんなら、現存の畑を引き継げるので1年目から収入がありますよね。でも、ぶどうの場合は苗木を植えるところから始めるので、最初に収穫できるまで3~4年かかります。それでも、開墾からコツコツ頑張っていたら、地元のおじいちゃん達が手伝ってくれるようになりました」 こうした事例をいくつも重ね、地元の人々も「最初は突拍子もないと思っていたけど、耕作放棄地が生き返るんだな」と感じてもらえたという。 「結果的に、移住者と地元の人で試行錯誤しながら力を合わせて『みかん鍋』という新しい名物を作りました
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移住者はどんな仕事をしているのか
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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