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迷惑客にならないために。“クレーム対応”のプロが明かす「正当な意見」と「カスハラ」の境界線

「もらった薬を飲んだら体調が悪くなった」と10万円要求

怒っている日本人の老夫婦 実際に森田氏が相談を受けた「不当要求」について聞いてみると……。 「ふだんは仕事でクレーム対応をしている人が『自分はいつもこれだけの神対応をしているから』と、不当な要求を求めてきたケースがありました。  コロナ禍のコンビニでは、お客様の横を通る際に『いらっしゃいませ』と言ったら、『コロナがうつる』と激怒されたり、『売り場に(特定の)商品がないのは私が来るとわかっていたから、わざと全て売り切れにしたんだろう』とカウンターの備品を壊されたりしたそうです。  ただ、これはまだ可愛いほうで、フィルムカメラの写真を現像していた頃、お渡しした写真に対して『もっと空は青かった』『フィルムが無駄になったから、新しいフィルムをよこせ』と言ってきた方もいました。どんなにこれ以上は対応できないとお伝えしても諦めず、最終的にはフィルムメーカーに『自宅まで22時に謝りに来い』と言ってきて……。  ほかにもひどいものでは『母親が病院でもらった薬を飲んだら体調が悪くなった』と息子さんが怒鳴り込んできて、あまりの大騒ぎっぷりにその病院が10万円を手渡してしまったケースがあります。味を占めた息子さんは、たびたび調剤薬局を訪れ、『病院では10万包んだぞ、お前らも払わねえのか』と脅してきたそうです。  これは言うまでもなく不当要求ですよね。体調が悪くなった原因が薬かどうかもわかりませんから、まずは病院が母親を再度診察するなどの事実確認をする必要があります」  結局、これは刑事事件となり、警察の調査が入ったところ、その息子はあちこちの病院で言いがかりをつけ、金品をせしめていたことがわかったという。

自分が迷惑客にならないために…

 前述の例は極端だが、無意識のうちに自分も「不当要求」をして迷惑客になってしまわないためには、何に気を付ければいいのだろうか。 「まずは自分が被った損害について『この店でこれを買った結果こうなっていた』と証明できるものを用意しましょう。その損害について、レシートなどを提示して原状回復してほしいと“冷静に”話すよう心掛けてください。企業側ではなく自分に問題がある可能性もあるので。  ポイントとしては疑問形で聞くことです。たとえば、『買ったばかりなのに壊れてしまったのですが、何が問題だったのでしょうか?』といった要領で、『要求』は出さないこと。『こうしてほしかったのに残念です』という表現で『要望』は伝えられるので、あとはそれを受けるかどうかは企業の判断です」  クレーマーやカスタマーハラスメントが取り沙汰される中、森田氏は「企業側がその存在を作り出してしまっている背景もある」と指摘する。 「店舗などでクレームが入った際、“言い訳”から入る人がいます。『お待たせして申し訳ございません』とか『ご迷惑おかけして申し訳ございません』といった言葉だけで構わないのに、『人手不足で~』などの余計な言い訳から入ってしまうと、客からするとそんな内情は関係ない話なのでイライラするわけです。  不当要求に対して、過剰な対応をしないことです。ちょっとしたクレームに過剰な贈り物をすれば、味を占めて何度もそういった要求をしてくる『クレーマー』を生み出してしまう。基本的に対応できない要求には最初から『できません』ときっぱり断ることが大切なんです」 「お客様は神様」という言葉の意味は、決して「お金を払っている客は何をしたっていい」わけではない……のは有名な話だが、あくまで店と客は対等な関係であることを改めて意識するべきだろう。 <取材・文/松本果歩>
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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