仕事

90代の親を介護する60代「老老介護で働けないシニア」の苦しすぎる仕事探し事情

飲食店や小売店での就職も難しい?

老々介護

写真はイメージです

さて、こうした家庭・家族の事情による希望によって、就きにくくなる仕事にはどんなものがあるだろうか。 例えば、飲食店や小売店などは夕方から夜の営業や土日の営業がある職場が多いため、条件に合わなくなりやすい。夜勤や土日のシフトがある工場や警備の仕事なども同じだ。ただし、人数が多く特定のシフトだけを選べるような職場は反対に希望に沿った働き方がしやすい。 早朝から仕事が発生する可能性のある介護や保育、一部の調理や工場、清掃や警備といった仕事も難しくなる場合がある。 一般企業の事務など、デスクワークは事情があるシニアに限らず人気だが、小規模の会社の場合は少人数のためにフルタイムが好まれ、短時間勤務の募集がないこともある。反対に大企業でのシニア向けの事務職中途採用は、フルタイムであっても求人自体がほとんどない。

思い切って“掛け持ち”で働くほうが楽になる場合も

では、もし自身が親の介護など家庭・家族の事情で働く時間に制限がかかった場合、どうすればよいのだろうか。 まず、勤めている状態でそうした事態になったのならば、安易に転職を決断する前に、介護休業など現在の勤め先のまま、可能な対策を行うことだ。介護休業は国が法律で定めた制度なので十分に活用すべきだし、介護休業給付金もある。 どうしても転職が必要となり労働時間の希望を叶えたい場合は、すべての条件を満たそうとするのではなく、優先順位をつけて妥協できる点を探すことが重要だ。 例えば、レストランの調理の仕事を希望しているのに、朝晩・土日が難しく、平日の昼間のみ勤務希望というのは無理がある。この場合は、大手チェーンのパート・アルバイトや、セントラルキッチンなどの食品工場を検討することで、勤務時間などの希望が叶えられやすくなる。 不慣れなうちは大変かもしれないが、思いきって、複数の仕事を掛け持ち(副業)することも、希望の時間に働きやすくする。日中の短時間の仕事をしながら、もう一つ在宅で時間を選びやすい仕事に就くといった形だ。 介護離職は社会問題にもなっており、公的な支援も重要となる問題だが、現実にはそれぞれが職探しをしなければならない。思い描いた希望条件を固めてしまって譲らないのではなく、条件の優先順をつけて、もっとも優先したい条件以外は柔軟に考え、視野を広げて求人を探せるように心がけたい。
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
1
2
おすすめ記事