更新日:2024年04月03日 18:03
エンタメ

YOASOBIの「アイドル」が映し出す日本の姿とは?“執筆3年の邦楽通史”に対する想いも<みのミュージック>

“東洋VS西洋”の構図はマチガイ

みのさん

『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』(KADOKAWA)を上梓したみのさん

―――一方で、今年3月にはNHKがアメリカのラジオ局NPRの人気番組「Tiny Desk Concert」の日本版の放送を開始しました。みのさんは、これを機に日本の音楽番組が演奏を聞かせる方向に変わっていくと思われますか? みの:ポップスの新曲をたまに聞くぐらいの平均的な音楽好きに照準をあわせたら、やっぱり歌を聞いているでしょうね。YouTubeの「THE FIRST TAKE」、「のど自慢」とかカラオケの採点番組とかもそうですよね。NHKの試みは面白いと思うんですけど、歌から演奏へという変化があるとしたら、ゆっくりゆっくり変化していくのではないでしょうか。  あと、洋楽と邦楽を対立事項で分けるのがそもそもアンフェアなのではないかと思うんです。それって、“東洋VS西洋”じゃなくて、よくよく見ると内と外の話なんですよね。西洋に向かって競争心を持っているような雰囲気がストイックすぎると感じます。 ―――それは昔の外交官のエドウィン・ライシャワーも『ザ・ジャパニーズ』という本で指摘していました。日本は世界から認められることがすべてだと思っていると。 みの:やたらとその視点で自分を鍛えようとする。言ってみれば、ドMなんですよね(笑)。

明治時代の官僚が変えた日本人の音感

―――なるほど。西洋に競争心を持ちつつも同化しようとしてきたアンビバレントな日本人の心情が浮かび上がってきます。では、それでもなお残った日本のうたのアイデンティティとはどんなものなのでしょうか?  みの:伊澤修二(明治時代の文部官僚)が主導した西洋音楽の導入で、確かに日本人の音感はかなり変わりました。変わったのですが、日本の伝統文化も含めてひとつの鍋に入れて全部混ぜちゃったというよりは、西洋音楽と伝統音楽、それぞれ別々にフォルダ分けされているという印象です。  日本人のやる音楽の質感という意味では、だいぶ混ざっているところはあるのですが。ただ、実は邦楽を邦楽たらしめているものは何かというのを探って、あとがきで答えをバーンと出そうと思っていたんです。でも書かなかった。なぜかというと、結局わからなかった。“空”みたいなところに行き着いちゃったんです。
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YOASOBI「アイドル」が映し出す“日本っぽさ”とは?
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史 にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史

YouTube「みのミュージック」で独自の音楽批評をおこない、多くの大人たち・音楽関係者を魅了する著者の第二弾

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