更新日:2024年04月16日 16:45
エンタメ

2024年春ドラマ「注目3女優の主演作」を爆速レビュー。今田美桜、生見愛瑠、広瀬アリス

●生見愛瑠『くるり~誰が私と恋をした?~』

(TBS 火曜午後10時)
くるり

番組公式HPより

 主演は「めるる」こと生見愛瑠(22)。記憶喪失になった24歳の女性・緒方まことを演じている。  放送前には「記憶喪失モノはやり尽くされたのでは?」と思っていたが、新味を感じさせた。自分が分からなくなった主人公が、以前より良い自分をゼロからつくり上げようとする。いわば、初期化されたスマホを復元するだけでなく、バージョンアップする物語。  記憶を失う前のまことは人に嫌われないようにするため、自分の素を隠し、悪目立ちしないようにしていた。職場では空気を読むことが最優先。男女問わず、決して珍しくないタイプだった。  そんな日常の中、ある日の夜に桜が咲く並木道を走る。何者かに追われていたからだ。ところが、並木道の先に階段道路があったため、転げ落ちてしまう。追っていたのは誰で、何が目的か? この部分はミステリー仕立てだ。  まことは頭をしたたか打ち、記憶を失う。一般常識はおぼえているのだが、自分のことは一切忘れてしまった。転落後に看護師に言った第一声は「アタシのこと知りませんか?」。まさに初期化だった。

まことの指輪は誰にもらったものか?

 免許証に記載されていた自宅に行ってみると、そこはガランとした殺風景な部屋。職場用と思われる服は地味なものばかり。よほど目立ちたくなかったらしい。  スマホで自分のインスタグラムを見ると、カフェの料理の写真ばかり。人物と一緒の写真はなし。親しい友達はいなかったようだ。  唯一の手掛かりは男性用の指輪。愛する人に渡そうとしていたらしい。愛する人なら自分のことをよく知っているだろう。その相手の男性は職場の同期で自称・友達の朝日結生(神尾楓珠)か、フラワーショップ店主で自称・元カレの西公太郎(瀬戸康史) か、あるいは知り合いであることを隠している謎の男・板垣律(宮世琉弥)か。  結生と公太郎は指輪のサイズがピッタリ合った。律も合うのだろう。この中にまことが愛する人がいる。一方で、まことを追い掛け、記憶喪失の理由をつくった人物もこの中にいそうだ。  痛快だったのは初期化されたまことの職場での行動。空気を読むことを第一とする考え方も失ったため、有能な派遣社員・松永(菊池亜希子)を都合良く使う職場の雰囲気が我慢ならない。  そのうえ松永が派遣切りに遭ったため、腹を立て、自分も会社を辞めてしまう。職場でこう宣言した。 「みんなとうまくやっていくため、つまんない服を着て、少しズルして、頑張ってきたんだと思うんです。でも、私この仕事に向いてないんです」(まこと)  記憶喪失という設定は非日常的だが、この言葉は多くの人が胸の内に潜めているのではないか。  まことは「私らしさって何だろう・・・」と考え込む。これも記憶喪失でなくたって、誰もが1度や2度は思うことだろう。
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広瀬アリス『366日』
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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