更新日:2024年04月16日 16:45
エンタメ

2024年春ドラマ「注目3女優の主演作」を爆速レビュー。今田美桜、生見愛瑠、広瀬アリス

広瀬アリス『366日』

(フジテレビ 月曜午後9時)
366days

番組公式HPより

 高校2年生のときから12年間、片思いだった同級生の男性とやっと付き合えることになった。実は相手も自分を思い続けていてくれた。4月7日のことだった。  初デートは2日後の4月9日。だが、相手は待ち合わせの場所に来なかった。子供を救おうとして事故に遭い、後頭部を強く打ち、急性硬膜下血腫の重傷を負ってしまったからだ。1か月が過ぎても意識不明のまま。このまま一生、目覚めない可能性が高い。  それでも主人公の雪平明日香(広瀬アリス)は、相手の水野遥斗(眞栄田郷敦)にずっと寄り添ってゆく決心をする。第2回のことだ。明日香は音楽教室の事務受付係。大ケガを負う前の遥斗は外食チェーンに勤務していた。ともに28歳である。  この2人を中心とする物語であるものの、そこに茨城県南部にある竜ケ崎市内の高校の同級生たち男女4人の日々が交錯する。伝統的にフジが得意とする青春末期の若者たちの群像劇でもある。  現実論者の介護福祉士・下田莉子(長濱ねる)は明日香に対し「まずは自分の生活を大事にしたほうがいいんじゃない」と助言する。病床の遥斗とは距離を置けというわけだ。しかし、薄情とは言い切れない。  遥斗と高校の野球部で一緒だった小川智也(坂東龍汰)は足しげく病室に通う。それが友情だと考えているようだ。これも間違ってはいないだろう。やはり元野球部員でコンサルタントの吉幡和樹(綱啓永)は遥斗の受難を知らされたものの、連絡すらしてこない。これも責められないはずだ。

ファーストシーンの意味は?

 高校卒業から10年も過ぎると、愛情や友情に対する考え方は個人差が大きくなる。足並みは揃わない。甘ったるい筋書きにしないところが、かえって小気味いい。ましてや遥斗と和樹の間には苦い過去があるようだ。  考察要素も伏線もない。それでも見応えがある。一番の理由は挿入される過去のエピソードに現実味があるから。ほかのドラマがほとんど描かない青春期の小さな切れ端である。  たとえば、明日香は東京の大学に進んだ。遥斗が東京の大学に進むと小耳に挟んだためだ。ところが、遥斗は北海道の大学に進学してしまった。本人に進路を確認すれば済んだ話なのだが、片思いの相手だから聞けなかった。  30代、40代になると、「なんてバカな進路の決め方をしたんだ」と思うが、バカなことを大真面目にやってしまうのが青春期である。  一方で遥斗は大学時代に上京すると、明日香の通っていた大学の近くを歩いた。「会えるんじゃないかと思って」。これも奇特な話なのだが、恥ずかしい思い出に事欠かないのも青春期だ。  第1回のファーストシーンは、桜の木の下に立つ2028年の明日香の姿だった。奇跡が起こり、遥斗の意識は戻ったのか、それとも――。<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
1
2
3
おすすめ記事