YOASOBI・藤井風の海外進出に見る、J-POPから消すことのできない「個性」の正体
“針の穴に糸を通すような”作業をしている藤井風
『Tiny Desk Concert』の藤井風も興味深く見ました。ソウル、R&Bのイディオムを見事に自分のものとして、いかにも“勉強しました”感もなく、一筆書きの柔らかさでもって体現する芸風は唯一無二です。 けれども、藤井風の“ソウル”がクオリティを高めれば高めるほど、生々しさ、迫力からは遠ざかっていく。 本家『Tiny Desk Concert』での、CHICやチャーリー・ウィルソン、そしてロバート・グラスパーやジェイコブ・コリアーなどと聴き比べると、藤井風は対照的、もっと言えば真逆です。 子音の強さ、メリハリのあるアクセントを根拠とするハイハットやベースライン。分厚いハーモニーにおける多声の一部として機能するボーカル。こうした西洋のイディオムを身に着けながら、藤井風は日本語でもってそこに逆行して針の穴に糸を通すような作業をしているわけですね。 それゆえに、彼の歌は細くしなやかにならざるを得ず、必然的に“洋楽”とは異なる響きを持ってしまう。 『Tiny Desk Concert』日本版でも、ディスアドバンテージこそが唯一無二の個性になることを示しているのです。
二組の海外進出が教えてくれたこと
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