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セクハラや性加害が“お酒のせい”では絶対に許されない理由。「アルコールで性欲は高まらない」

お酒の席でセクハラが起きてしまう理由

――お酒で性欲が高まらないとすると、なぜお酒の場でセクハラが起こりやすいのでしょうか? 富永:結論から述べると、お酒を飲んでセクハラや性的な行為に走るのは、テストステロンの値が高まったからではなく、脳の前頭葉の働きが鈍くなったからです。  この「前頭葉」という部分は、おもに認知機能を司り、感情をコントロールする、いわば「感情のブレーキ役」です。しかし、アルコールが入るとこの前頭葉の働きが鈍くなってしまい、感情が制御不能に陥ってしまうのです。たとえば、職場で若い女性が前日と同じ洋服を着て出社したとします。そのとき、「あ、さては恋人の家に泊まって、そのまま出社したのかな」と内心思っても、シラフなら「さすがにこれはセクハラになるから言わないほうがいいだろう」と思いとどまるものです。しかし、アルコールが入ると、前頭葉によるブレーキが利かなくなっているため、「昨日、いいことあったでしょう?」「彼氏と順調なの?」といったセクハラ発言をしてしまうのです。「アルコールを飲むことで、ストレスやプレッシャーから解放される」という人もいます。しかし、実際はストレスやプレッシャーがアルコールで霧散したわけでなく、アルコールによって感覚が麻痺し、感じにくくなっているだけです。  日本のお酒や酔っぱらいに対する寛容さは、世界でも屈指と言われています。海外では、ビーチでの飲酒が禁止されている国や地域も多いですが、日本では「海の家」でお酒を売っているのは当たり前。また、自動販売機で自由にお酒を買えることに驚く海外からの観光客も多いと言います。  このような「酔っ払いに甘い」文化土壌で育ってきた私たちは、たとえセクハラやアルハラが目の前で起こったとしても、「お酒の席だから」と穏便に済まそうとしてしまいがちです。しかし、これはアルコールによるハラスメントや性加害の被害を矮小化する「二次加害」につながります。  そもそも「お酒のせい」で別人になったり、性欲が急激に高まるのではありません。感情のブレーキがゆるみ、その人の持っている「本性」が表に出てくるだけです。「結構、飲んでいたから許してあげて」ではなく、普段はどんなに立派に振る舞っていても、飲んで本性を現した姿こそ、その人そのものなのです。

酔っていながら獲物を狙う加害者たち

――どんなに人格者や偉い人でも、酒席のほうが本当の姿であり、「普段はいい人だから」という言い訳は通用しないということですね。 富永:そうです。ちなみに、セクハラや性加害をする人は、酔っていると言いながらも、冷静に抵抗してこない相手を見定めているものです。抵抗して大事にしそうな人はちゃんと避けて、気が弱かったり、大人しかったり、立場が弱かったり、ものわかりがよさそうだったりと、その日のターゲットを虎視眈々と見極めています。なおさら、「普段はいい人」や「ストレスがたまって酔っていたから」といった言い訳が通用しないことがおわかりになるでしょう。  逆に言えば、お酒が入ってもぶれずに魅力的な人、飲み方がかっこいい人は、同性・異性を問わず人を惹きつけます。同性から慕われる人は異性にも好印象を与えるので、セクハラで相手の関心を得ようとじたばたするより、かっこよく飲む習慣を身につけたほうが絶対にモテるようになると思いますよ。<取材・文/日刊SPA!取材班>
痛みで苦しまない人生を医学で導く「痛み改善ドクター」。愛媛県松山市にて富永ペインクリニックを開院。代表を務める「まつやま健康寿命延伸コンソーシアム」は、経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択。性の悩み専門の性交痛外来を開設し、全国から1万人以上がオンライン診断を受ける。医療×ITで人生100年時代を豊かにするデジタルドクターである。たしかな腕とユニークなキャラクターが人気を呼び、NHK『おはよう日本』、TBS『中居正広の金曜日のスマたちへ』などのテレビ番組にも出演。著書累計98万部。YouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は登録者27万人を数える。Facebookライブは年間1000万人以上にリーチし、日本最大級のオンラインセックスコミュニティ(会員数1.6万人)『富永喜代の秘密の部屋』を主宰
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