「酔っていたから」では絶対に許されない
大企業のトップから政治家・芸能人まで、いまや「セクハラ」「性加害」で一発でクビが飛ぶ時代だ。それほど気をつけないといけないとわかっていても、お酒が入ると気がゆるむときもある――しかし、「これからは“酔っていたから”では、絶対に許されない」、そう語るのは『
女医が導く いちばんやさしいセックス』(扶桑社)の著者・富永喜代氏だ。性を語る場として日本最大級のオンラインコミュニティ「富永喜代の秘密の部屋」(会員数1万6000人)を主宰する医師・富永氏は、「お酒で性欲が高まることはなく、セクハラや性加害の原因は別にある」と語る。アルコールとセクハラの本当の関係性について聞いてみた。
写真はイメージです
――セクハラや性加害の場として、しばしばお酒の席が登場します。お酒が入るとムラムラするという人もいると思いますが、実際、性欲が高まるのでしょうか?
富永喜代(以下、冨永):適量のアルコールは人との距離を縮める有効なコミュニケーションツールです。知り合ったばかりの相手でも、アルコールが入ることでリラックスして、打ち解けていくこともできますし、ときにはロマンチックな夜を彩ってくれることもあるでしょう。
2003年のイギリスでの研究によれば、血中アルコール濃度が0.01%〜0.009%のほろ酔い状態になったになったとき、男性は女性に対して評価が甘くなると報告されています。お酒片手に談笑していたら、隣に座っている女性が妙に色っぽく見えるようになった……そんな経験がある男性もいるのではないでしょうか。
ただ、それとセクハラや性加害は別の話です。女性に当たり前のようにお酌をさせる、頭やからだを触る、肩や腰を抱く、卑猥な冗談を言う、「まだ結婚しないの?」「彼氏とは最近どう?」などとプライベートを詮索する、「ノリ」と称して服を脱ぐなど、酒席での狼藉を挙げ始めたらきりがありません。上司や社長にお酒の席で抱きつかれても、多くの人はその場で「イヤ!」とはっきり言いづらいものです。「お酒の席なんだから」「冗談もわからないヤツだな!」などと言う周囲の人間もいるかもしれません。
ひどい話ですが、お酒に酔って前後不覚になった女性をホテルに連れ込んだり、睡眠薬などの薬をお酒に混ぜて相手の意識をもうろうとさせたり、抵抗できない状態にしてセックスをする……といった卑劣な事件もあります。当然ながらこういった行為は、性的同意を取っているとは言えず、内閣府のホームページでも「相手が抵抗できない状態で、性交やわいせつな行為を行うことは、性別を問わず刑法の処罰の対象となり得ます」と明言されています。ここに「性別を問わず」とあるように、こうしたセクハラやアルハラは、男性から女性に行われるものだけでなく、女性から男性はもちろん、同性同士のケースもあります。
女性上司が部下の男性に「男のくせにお酒が弱いなんて、将来出世しないわよ!」とアルコールを強要したり、男性上司が部下の男性に「筋肉すごいね〜」などと言って二の腕や胸をなで回す……などです。ときに当の本人はセクハラをしているという意識がないパターンも少なくありません。
では、このようなセクハラや性加害がお酒の席で起こりやすいのは、「アルコールで性欲が高まったから」なのでしょうか。答えはNOです。人間のからだで性欲を司るのは、男性ホルモンのテストステロンです。たしかに、少量のアルコールでテストステロンの値が上がるという報告もあります。ですが、それだけでセクハラや性加害を抑えきれないほど性欲が高まるとは言えませんし、過度な飲酒は、むしろテストステロンに悪影響を与えます。
『女医が導く いちばんやさしいセックス』(扶桑社)
痛みで苦しまない人生を医学で導く「痛み改善ドクター」。愛媛県松山市にて富永ペインクリニックを開院。代表を務める「まつやま健康寿命延伸コンソーシアム」は、経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択。性の悩み専門の性交痛外来を開設し、全国から1万人以上がオンライン診断を受ける。医療×ITで人生100年時代を豊かにするデジタルドクターである。たしかな腕とユニークなキャラクターが人気を呼び、NHK『おはよう日本』、TBS『中居正広の金曜日のスマたちへ』などのテレビ番組にも出演。著書累計98万部。YouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は登録者27万人を数える。Facebookライブは年間1000万人以上にリーチし、日本最大級のオンラインセックスコミュニティ(会員数1.6万人)『富永喜代の秘密の部屋』を主宰
記事一覧へ