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時価総額で世界一「エヌビディア」は半導体バブルなのか?“今が買い時なのか”を検証する

エヌビディアに想定されるリスクとは

 現在、エヌビディアはAIブームの中心であり、そのGPUはAIトレーニングと推論において不可欠な存在となっていますが、エヌビディアの最新決算報告書によると、データセンター収益の約40%が推論需要、約60%がトレーニング需要を占めています。この数字を見れば、企業の生成AI導入はまだテスト段階であり、トレーニング需要が大きい状況にあることが見えてきます。  そもそもAIモデルの開発において、大規模化と効率化の2つのトレンドがあり、一部の企業はモデルの大規模化を追求し続けていますが、他の企業は効率性を重視し始めています。  これにより、特にトレーニング需要が今後減少する可能性があります。またオープンソースのAIモデルの台頭により、APIの価格競争が激化し、エヌビディアの市場シェアに影響を及ぼす可能性もあるでしょう。  さらに、エヌビディアの競合となるAMDやインテルもAI市場でのシェア拡大を狙っています。AMDは最新のMI200シリーズGPUでエヌビディアに対抗し、インテルも生成AI学習に向けたAIアクセラレーターの強化を続けています。これにより、将来的にエヌビディアの市場シェアが奪われる可能性もゼロではないのです

海外アナリストの見解もバラバラ

株価暴落

※画像はイメージです

 2024年の世界のAI市場規模は5000億ドルに達することが予想されています。しかし、この成長は一部の大手企業に集中する可能性が高く、市場全体の成長が鈍化するリスクも存在します。  エヌビディアのトレーニング需要が減少すれば、大手クラウドプロバイダーの設備過剰が発生し、AI投資が凍結される可能性もあります。これにより、エヌビディアの売上が減少して株価が下落するリスクが考えられるでしょう。  その一方、エヌビディアはAIトレーニング需要の減少に備えて、エッジAIや自動運転車、ヘルスケア分野への進出を強化しています。また最新のGPUアーキテクチャ「Hopper」を2022年に発表し、性能向上と効率化を図っています。これにより、新たな市場での成長を虎視眈々と狙っているのも事実です。  エヌビディアのCEOであるジェンスン・フアン氏は「我々はAIの未来を見据え、新たな市場への投資を続ける」(GTC 2024での発言)と語っているように、エヌビディアが今後もさらに事業成長を続ける可能性もあるでしょう。  その一方、市場アナリストによっては「エヌビディアは短期的には成長を続ける可能性が高いが、競合の台頭や市場の変動に注意が必要」という趣旨の発言したり、反対に「エヌビディアは新たな市場への進出を強化しており、長期的な成長が期待される」という趣旨の意見を持つアナリストも存在します(ブルームバーグ「エヌビディア、ばらつく成長予想が将来の不安材料-カイザー」2024年6月25日)。  つまり、現段階ではエヌビディアの将来性について、海外アナリストの意見が分かれていること知っておくことが、とても重要ではないでしょうか。なぜなら、保有株の中でも多くの利益をもたらしている株に対しては、誰もが反対意見を軽視しがちになるからです。
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エヌビディアだけでなくTSMCにも注目の理由
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金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

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