仕事

「タイパが悪すぎる」上司とケンカして半年で辞めた20代社員。本当に非効率で無駄な仕事だったのか?――大反響・上司に嫌気がさした人たち

地道な営業に意味はない?

 田中さんたちの仕事は、日常業務の約7割以上が営業活動となる。しかし現在は資材高騰や地価の上昇で、1棟1億円の建築物を建てたい人はいても、現実的に建てられる人を探すのは簡単ではないと話す。 「たしかに、得意先もない新入社員にとっては難易度が高いです。一方、上司や先輩は紹介などをうけて成約しているので、そのような姿を見ていると、汗水流して結果が出るのかもわからない地主を地道に訪問していくことに意味がもてず、耐えられなかったことは少し理解できます」  業務効率を考えれば、Aの言い分は一理あるものの、改善策を提案するなど、もう少し上司にうまく伝えることができていれば、状況は変わっていたのかもしれない。

【ケース2】「タイパが良い」という理由で入社

がんばれ 機械の修理エンジニアをしている鈴木健太さん(仮名・30代)は、新人教育担当を任されている。ある年、専門学校を卒業したばかりの男性新入社員が入社した。 「真面目で積極的にコミュニケーションをとる性格から、将来性やリーダー性を強く感じました。入社前は、整体師の仕事を選択するか葛藤があったとのことで、うちの会社を選んでくれてよかったというのが、正直な思いです」  鈴木さんは、「今の仕事を選んだ決定打は何か」を聞いてみることにしたという。すると、いわゆるZ世代ならではの回答が返ってきた。 「彼いわく『整体師を志すには、一人前になるには時間がかかり過ぎる。“やりたい仕事”と“稼げる仕事”を天秤にかけたときに、今の仕事の方がタイパ良いんですよね』とのことでした。若い世代は達観しているなぁと、このときは感心したのですが……」

「新人のくせに生意気だ!」と上司が激高

 入社から3ヵ月ほど経った頃、彼が上司から叱責を受ける場面に遭遇した鈴木さん。変化を嫌う保守的な上司と、無駄や不必要なことを排除したい彼の意見が真っ向から衝突していたという。 「会社を根本から良くしたい」との正義感からくる行動だったのではないかと振り返るが、鈴木さんは新人教育担当として仲裁に入ることに……。 「上司は『新人のくせに生意気だ!』とすでに激高していました。穏便に済ませるためにいったんこの場は謝罪するように彼に言いました。しかし、彼の謝罪は簡単に取り繕う程度で、その態度に上司はさらにヒートアップ。上司をなだめることで精一杯でしたね」  話し合う時間を設けた鈴木さんだったが、すでにフォローが遅かったようだ。 「彼が最後に残した『本当にタイパが悪い会社です』という言葉が印象的でした。結局、数日後に会社を去って行きました。もう少し早くフォローしてあげられたらよかったんですが……。私には『感謝している』と言ってくれたのが救いです。ただ、彼は今後、整体師になるためにイチからやり直すそうなのですが、タイパうんぬんの話でいうと、少し心配になっちゃいますね」 <取材・文/chimi86>
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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