お金

「世界の中でも日本の財政は超健全」元内閣官房参与・髙橋洋一がそのワケを解説

利払い問題は、同等の資産からの金利収入で解決できる

60歳からの知っておくべき経済学

※写真はイメージです

 その後、2000年代に入り、小泉政権下で公表する動きになった。世界各国でも統合政府BSの作成が進み、データも蓄積され、ようやくIMFでも研究が可能になった。  IMFのレポートでは、一般政府と公的部門のBSが主に分析されている。一般政府は中央政府と地方政府を合わせた概念で、公的部門は日銀を含む公的機関を加えたものだ。  レポートには、世界各国の中央銀行を含むBSのネット資産対GDP比が示されている。それによれば、日本の公的部門のネット資産対GDP比はほぼゼロだ。  こうした事実から導かれる結論は、大きな借金を抱えた利払い問題は、同等の大きさの資産を持っていれば、資産からの金利収入で解決できるということだ。  またレポートには、日銀を含まない政府単体のBSのネット資産対GDP比も示されている。ここでも日本は若干マイナスだが、ギリシャやイタリアと比較しても、それほど悪くない数字だった。

海外の専門家は知っていた、日本の財政赤字の大部分が無効化されている事実

 この調査の結果、ネット資産は単純に赤字国債を発行するだけだと減少してしまうが、研究開発費など投資に回せば減少しないことがわかった。  一般政府の純資産対GDP比と、前項で説明した、その国の信用度を表すCDSレートにはかなりの相関がある。ここから筆者は、日本が5年以内に破綻する確率は1%未満だと結論づけたわけだが、日本のネット資産がほぼゼロであることと整合している。  こうした話は、海外の専門家も同様に認識していた。彼らは、日本の財政赤字の大部分は無効化されていると指摘していたが、日本の経済・財政学者は、海外の専門家の認識が誤っていると主張していた。
次のページ
財政破綻の可能性を理由に実行されてきた愚策の数々
1
2
3
4
5
1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。その他にも、著書、ベストセラー多数。YouTube「髙橋洋一チャンネル」の登録者数は123万人を超える。

記事一覧へ
60歳からの知っておくべき経済学 60歳からの知っておくべき経済学

財政の仕組み、税金、保険、年金、仮想通貨、家の購入……正しい経済知識があなたを守る

おすすめ記事
ハッシュタグ