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「世界の中でも日本の財政は超健全」元内閣官房参与・髙橋洋一がそのワケを解説

政府資産を売却せずに増税や緊縮政策を行うことによって経済成長が阻害される

60歳からの知っておくべき経済学

※写真はイメージです

 前述のラインハート/ロゴフ論文の誤りが指摘されたことで、緊縮財政の機運はやや和らいだ。しかし、消費増税を見送ると財政再建が遅れるという考えに固執する、増税派の経済学者はまだ日本には多い。  なぜ、彼らはそこまで消費増税にこだわるのか。その答えは、増税派が「横断性条件」という経済モデルにとらわれていて、それを根拠にしているからだ。  横断性条件とは、統計学や計量経済学の文脈で使用される概念で、横断データの解釈や分析に関する数式表現であるが、説明するのは難しい。  簡単にいえば、「将来の国債残高を目立たないレベルにするため、国債を基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化で完済しなければならない」と増税派は解釈しているということだ。  しかし、この解釈には注意が必要だ。まず国債残高を目立たないレベルにまで減らすことが目的なら、別にプライマリーバランスを黒字化する必要はない。中央銀行が量的緩和で国債を保有することで、国債残高を減らせるからだ。

政府資産の売却もプライマリーバランスの改善策

 もっとも、プライマリーバランスを改善したいのであれば、政府の保有資産を売却するのも一つの手段だ。 60歳からの知っておくべき経済学(グラフ) しかし、彼らは頑なにそれをしようとしない。どの国でも財政が危なくなると、まずは資産の売却を考えるのが当たり前なのに、だ。  政府資産を売却せずに増税や緊縮政策を行い、それによって経済成長が阻害されれば税収が伸びず、かえってプライマリーバランスを悪化させる可能性が高い。  図f-3のように、プライマリーバランスと前年の名目GDP成長率の関係を調べてみると、両者は密接に連動していることがわかる。  名目GDP成長率が伸びなくなると、財政も改善できなくなってしまうのだ。 文/髙橋洋一 構成/日刊SPA!編集部
1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。その他にも、著書、ベストセラー多数。YouTube「髙橋洋一チャンネル」の登録者数は123万人を超える。
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