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「やみくもに賭けたら無一文に」東大卒ポーカープレイヤー×気鋭のエコノミストが明かす“勝負の極意”

損切りというリスク管理

エミン:ポーカープレーヤーの場合、ひとつのセッションで賭けるのは軍資金(=バンクロール)の5%ぐらいが一般的ですよね。株のデイトレードやFXトレードをする場合も同様に、ひとつのトレードで資産の5%以上をリスクにさらさないというルールを徹底する人もいます。こうしたバンクロールマネジメントは、習得すればそれで勝てるというものではありませんが、あっという間にすべてを失って退場という事態を避けるために必要なスキルです。 木原:リスクの調整は、株の方がコントロールしやすいと思います。投資金額だけでなく、銘柄選びや分散、レバレッジの有無を変えることでもリスクを調整できますから。 エミン:確かに、厳密なリスク管理や速やかな損切りが求められるのは、信用取引やFX、指数先物のように資金の額を超えたレバレッジ投資をするときです。余剰資金の範囲内で現物株式を持つ分には、そこまで厳格なリスク管理は必要ないし、その点はコントロールしやすいですね。 木原:僕は損切りのルールを徹底するというより、下落しても喜んで買い増しできるような銘柄を、損切りしなくていい金額に抑えて投資することが多いです。そうすると上昇したときのリターンも少なくなるので難しい判断ではありますが、両立はできませんから。資産の全額をひとつの銘柄にぶち込んでいたら損切りは必須だけれど、しっかり分散ができているなら株価が下がったという理由だけで損切りする必要はないと思います。

明らかに損な投資とは

木原直哉

木原直哉氏

木原:そもそも、株価はその企業とはまったく関係のない理由で下落することもありますよね。本来そこは損切りではなく、追加で買うポイントなんですよ。あきらかに不当に安くなっているのは期待値がプラスな局面ですから、わざわざ損切りという期待値マイナスのプレーをするのは明らかに損です。そうしなければならない状況に追い込まれたとしたら、それは単純に投資金額が高すぎるのであって、もっと少ない投資金額だったら損切りしなくても済むはずです。  僕も信用取引でレバレッジをかけてはいるんですが、せいぜい2倍程度に抑えながら複数の銘柄に分散していて、目いっぱい張るようなことは今はしていません。  知り合いで何十億という投資資金をフルレバレッジで張っているトレーダーがいますが、少しでも下落の兆候が見えたら迷うことなくポジションを切っています(現金化すること)。そういう判断と行動ができるから生き残っているのであって、それができないならもっと小さいサイズで投資しないとダメでしょうね。 エミン:おっしゃる通りで、現物を適切なサイズで持っているのと、レバレッジをかけて持っているのとでは、取るべき対応はまったく異なります。正しい対応をしても必ずしも結果がプラスに働くわけではありませんが、それでもそのプロセスが重要です。結果論にこだわりすぎるとロジックが身につかないし、生き残れませんから。 <談/エミン・ユルマズ、木原直哉> 【エミン・ユルマズ】 エコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。トルコ、イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。2024年レディーバードキャピタルを設立。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信を積極的に行っている。ポーカー名はJACK。 【木原 直哉】 1981年、北海道名寄市出身。2001年に東京大学理科一類に入学。在学中は将棋部に所属し、バックギャモンやポーカーなどの頭脳ゲームに熱中していく。10年かけて東京大学理学部地球惑星物理学科を卒業し、翌2012年WSOP $5000 Pot-Limit Omahaで優勝し、日本人初のブレスレットホルダーに。ポーカーの戦略やメンタル面についての教育活動や国内大会での解説など日本国内外でのポーカーの普及に努めている。著書に『東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考』『運と実力の間』などがある
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