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令和の虎で元ホスト・桑田龍征は借金80万円から、いかにして年商30億円を築いたのか?

◆「仲間」を重んじる精神が人を呼び、人をつくる

水野:ホストクラブの事業の立て直しと時を同じくして、武田塾のFCにも加盟されたのですよね。創業者の林尚弘さんとは面識があったのですか? 桑田:林さんとは24歳で共通の知人を通して出会い、29歳で再会しました。同じ大学生経営者で同世代だった林さんが、出会った頃は2校だった武田塾を100校まで拡大していて、「だいぶ差がついてしまった」と感じていたんです。  どうしても成功の理由が知りたくなり、武田塾のFC事業に飛び込みました。FC加盟の経験によって、停滞した組織を再生し、事業を加速するためのヒントをたくさん得ることができました。 水野:令和の虎チャンネルも、フランチャイズ化のビジネス展開も、初の書籍『ホスト2.0』出版も、そしてあえて言えば今回の取材も林社長のご紹介ですよね。人生の転機に林社長が現れている気がします。  ところで、組織の改革にあたっては、コーチングや研修を導入するなどマネジメントも大きく変えられたと聞いています。 桑田:ええ、そうです。特に「なぜホストでお金を稼ぎたいのか」という目的を引き出し行動を促す「コーチング手法」を取り入れたのは、当時のホスト業界ではかなり異例だったと思います。  実際、取り入れたことで組織は劇的に変化しました。自分の成功パターンを押し付けるのではなく、一人ひとりの能力を開花させる「成功パターンのカスタマイズ化」が良かったのでしょう。 水野:ホストだけではなく、「バックチーム」という形でプレイヤー(ホスト)以外のスタッフも厚遇する、というのは今までにはない斬新な取り組みでした。「スタッフ全員を大事にする」ことが組織力の強化につながったのですね。 桑田:そうですね。「みんなで売上を達成する」ということは意識していましたね。その結果、一人、また一人と売上を出すホストが増え、「ここでずっと働きたい」と自然とメンバーの気持ちも一つになっていきました。  現在でも、古参のメンバーが幹部として活躍しています。組織がどんどん強くなったのは、間違いなくこのメンバーたちがいたからですね。ありがたいことです。

◆YouTubeはマネタイズしなければ何の意味もない

発信力のある桑田さんが消費者に向けて直接販売する「通販の虎」を展開する。D2CやP2C業界を牽引する(本人のインスタグラムから引用)

水野:一方でYouTubeでの活躍も目立ちます。ここ数年で、令和の虎出演により一気に知名度が上がりました。YouTube自体はいつからされていたんですか? 桑田:ホストクラブの経営者ということで、「ドラゴンPM」というチャンネルを2015年からスタートしていたのですが、これが今一つウケなかったんですよ。今となって思えば内輪ウケになっていたのかもしれません。ただ、「やる」と決めたことなので継続してチャンスは伺っていましたね。 水野:令和の虎出演はどんなことがきっかけだったのですか? 桑田:きっかけは武田塾のオーナー取材で、白羽の矢が私に立ったことです。そのご縁で、林さんや岩井さんに「マネーの虎のYouTube版をやりませんか?」と提案したところ、取り上げてくださって、形になりました。  岩井さん、林さんらと共に始めた令和の虎でしたが、最初は志願者が全然来なくて焦りましたね。3~4年は低空飛行が続きましたが、2022年初頭に火がついて、そこからぐっと知名度が上がった感覚があります。 水野:一気に桑田さんの名前が知られるようになり、それに伴ってご自身の事業の売上も上がっていったのでしょうか? 桑田:いえ、それが全然比例していかなかったんです。「どうしたものかな」と考えているとき、縁あってユーチューバーのヒカルさんと同居することになり、自分もヒカルさんのチャンネルに登場することが多くなりました。  彼はまさにタレントで、撮影が始まれば24時間カメラは回りっぱなし。「この環境をビジネスに活かせないか」を考え、始めたのが「通販の虎」だったのです。虎たちが認めた商品だけを販売する、というルールで始めた物販サイトは知名度の上昇もあって多くの話題を呼び、動画からマネタイズの動線ができました。 水野:YouTubeを始めても続かない大きな原因が「マネタイズできない」ことにあると言われますが、通販の虎はYouTubeとのかけ算で成功した事例ですね。 桑田:まさにそうです。実際、YouTubeの収益は毎月200万~500万円くらいあるのですが、それも編集代などで大部分が消えていきます。だからこそ、ビジネスにYouTubeをどう生かすか? その発想にならないとYouTube単体で継続していくことは難しいと思います。 水野:なるほど。では、経営者がこれからYouTubeを始める場合、まず何から始めるとよいでしょうか? 桑田:2つあります。1つは圧倒的に「経営者の自己紹介をする」ことですね。求職者が履歴書を書くように、経営者もまた「人となり」を出すべきだと思っています。  これはホスト時代の経験が活きているのですが、ホストってまず売れるために、「自分はどんな長所があるのか」というのを徹底的に突き詰めるんですよ。その長所を伸ばすことが他者との差別化になり、結果「あなたを指名したい」といって売上につながるんです。  経営者も同じですよね。自己紹介をしていくことで「自分しかできない強み」を知り、そしてそのことを視聴者に知ってもらう。信頼を得る。それが高まり、自分のブランドになっていきます。そうすれば、商品やサービスの広告を打たなくても自然に集客できるようになります。広告費をかけるなんて、SNSをサボった経営者への“罰金”である、とすら考えています。経営者は「自己紹介」の動画をつくる、一択です。  それができたら、考えてほしいのが自分の好きなことをYouTubeに反映させていくことですね。現在、東京都リーグ2部に所属する「シュワーボ東京」のスポンサーをさせていただいていますが、監督を務めているレオザさんは戦術分析が評価され、現役選手はもちろん、日本代表の選手も見て参考にしているほどです。  サッカーチャンネルで突き抜けたレオザフットボールさんもトップユーチューバーのヒカルさんも、自分の好きなことをやり続けてビジネスにつなげています。やっぱり「好き」というパワーは何物にも勝るのではないでしょうか。
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自分の時間を確保しながら、ビジネスを前に前に進めていく
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1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。

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