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伝説のキャバ嬢から年商35億円経営者へ。愛沢えみり「女性が活躍し続けられる社会を目指したい」

 いまやYouTubeはレッドオーシャンで、収益化やビジネスへつなぐのは難しいと言われる。そうした側面があるのもたしかだろう。しかし、動画メディアが持つ拡散力、影響力はまだまだ健在である。その恩恵を受けた一人が、今回登場する株式会社voyage代表取締役の愛沢えみりさんだ。

元歌舞伎町のカリスマキャバ嬢で、現在は実業家として女性のキャリアを支援する愛沢えみりさん

「伝説のキャバクラ嬢」といったほうがピンとくる人も多いだろう。愛沢さんは18歳でキャバクラ嬢としてデビューし、トップクラスの売上を出す快挙を遂げた。その後、新宿・歌舞伎町のキャバクラに拠点を移し、その勢いはさらに増し、人気キャバクラ嬢へと駆け上がった。一晩当たりの売上最高額は2800万円。モデル活動やテレビ出演、数々の書籍を出版するなど、キャバクラ嬢にとどまらない活躍を見せる。  2019年に引退した後は、アパレルやSNS運用などを手がける会社経営に注力。年商35億円を売り上げ、今最も勢いのある経営者の一人でもある。「娘が生まれてから、毎日が幸せの絶頂です」と話す愛沢さんに、これまでの成功の秘訣とYouTubeでの活動、そして娘に対する思いと今後の展望について聞いた。  インタビュアーは、出版プロデューサーでビジネス書作家の水野俊哉さん。水野さんは出版プロデューサーとして数々のヒット作を世に送り出し、自らも作家として多くの書籍を出版している。

◆起業して気づいた「個」ではなく「組織」で力を発揮することの大切さ

水野:現在も変わらぬ美貌を誇る愛沢さんですが、1年前にお子さんが生まれるなど、ここ最近では大きな変化があったんですよね。 愛沢:はい、そうです。娘がとにかく可愛くて。今まで仕事が大好きで仕事人間だった私が、こうも変わるなんて私自身が本当に驚いています。 水野:愛沢さんといえば「元伝説のキャバクラ嬢」であり、モデルもされていて、現在のインフルエンサーという立ち位置の先駆けだったと思います。その頃の2014年に、株式会社voyageを設立されたんですよね。 愛沢:はい、設立当時はモデルやキャバクラ嬢もしていた時期で、同時に経営者もスタートさせました。最初は起業がどんなものなのか、どうすれば経営がうまくいくのか右も左もわからなかったのですが、ただただ可愛い洋服が好きで、それをみんなに販売して喜んでもらいたい。そういう気持ちが強かったですね。 水野:会社を設立して10年、ファッションブランド「EmiriaWiz」立ち上げからは11年になるわけですが、現在と昔とで大きく変わったことはありますか? 愛沢:一言で言えば「人に任せて、組織で売上を出せるようになった」ことですね。  起業した当時は「自分が動いて売上を立てればいい」という考えが強くありました。キャバクラ嬢という職業は、売上が出るも出ないも自己責任の世界。起業もその延長線上で「自分が頑張ればいい」という思いが強くあったからです。  実際、数年はそれでうまくいっていましたし、これでいいんだとも思っていました。ただ、事業規模が大きくなってくると一人では限界があり、組織の必要性を感じました。  苦しかったですね。今までがむしゃらにやっていればよかったことが、今度は人に任せて売上をつくらなければならない。幸い、アイデアだけはどんどん湧いてくるので売上は増えていくのですが、それと反比例するように人が辞めていってしまう時期も経験しました。 水野:それはちょっと意外です。むしろマネジメントは得意なのかと思っていました。 愛沢:人に弱みを見せるのが苦手で、承認欲求も高くないんですよ。キャバクラ嬢をやっていたのに矛盾するかもしれませんが、自分らしさを押し出すよりも、「求められる愛沢えみり」を出すほうが得意なんです。  だけど企業運営では、そういうことよりも「自分がどうしたいか」っていう判断と決断の連続ですよね。おそらく、そこが足りなかったんだと思います。  そのことに気づいてからは、社長という立場で「事業をどうしたいか」「会社をどんな場所にしたいか」「どんな人と仕事をしたいか」と自分の言葉で語るようになりました。その頃から、マネジメント力もついてきたように思います。 水野:スタッフさんにどうしてほしいか、どんな動きをしてほしいかまで伝えられるようになり、スタッフさんがやるべき行動が明確になったわけですね。 愛沢:そうですね。また、「個のスタッフはどんなことが得意なのか、何が苦手なのか」よく観察して、適材適所を目指すようにしたことも大きかったと思います。試行錯誤しましたが、私がほしい組織の形を示すことができるようになったのは、本当にここ3~4年だと思います。 水野:自分の役割を無理に広げず、スタッフさんに任せられるようになり、YouTubeも子育ても注力できるようになったのですね。

子育てによって業務効率化に拍車がかかった

水野:娘さんとの暮らしについてもお伺いしたいのですが、だいぶ心境の変化もあったと聞いています。 愛沢:出産する前までは、「妊娠・出産・子育てをしながら、バリバリ働こう」って意気込みだったんです。でも、いざ産んでみると変わるものですね。もう子どもとの時間が愛おしくて愛おしくて。常に子どもといたい、いられて幸せっていう完全ママモードになってしまいました。  自分の変わりように自分が一番、驚きました。「ママになるために生まれてきたんだ」とすら思うのですから。 水野:劇的な変化ですね。まさにステージが変わって、気持ちも一新されたということ、正直、男性にはそこまでの変化って感じられないですもんね。 愛沢:そうですね。あわせて私は、付き合う友達にも変化がありました。ママ友と話す機会が増えたことで、「子どもを育てながら働くことの難しさ」を知ることもできました。  働きたい気持ちはあるのに、どうしてもワンオペにならざるを得なくて、仕事ができない。それって、とてももったいないことだなとも感じましたね。 水野:新たな視点が開けたというか、言い換えれば女性として生きることの難しさも知った、ということでしょうか。 愛沢:ええ、そうですね。もちろん私自身、仕事も会社の経営もあるので、べったり子どもといるわけにはいきません。でもだからこそ、「自分でやるべきことをしぼる」「短時間で集中できる環境を整える」「スケジュール管理を徹底する」ことを自分に課しました。  その結果、より効率よく業務が進むようになり、おかげでYouTubeの撮影にもしっかり時間がとれるようになりました。 水野:まさにその気付きをくれたのが娘さん、ということですね。 愛沢:本当に娘には感謝しています。そうした行動の転換って意外と自分からは出てこなくて、外的要因によって生まれるものなのだなとつくづく感じています。 水野:それほどまでに可愛いのだなと思うと同時に、やはり男性経営者にはないしなやかさ、優しさを感じます。
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「素」の自分を見せられる大事な場所がYouTube
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1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。

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