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生ビール165円、小鉢33円…何もかもが安い、干物定食「しんぱち食堂」で朝9時台から飲む

 ちょっとだけ飲んでから帰りたいけど、わざわざ居酒屋に行くほどではない――。そんなときに重宝するのが「ちょい飲み」のお店だ。吉野家の「吉呑み」を筆頭に、最近ではファミレスやファストフード、大衆中華チェーンなどでもちょい飲みセットを提供するところが広がっている。
パリッコのチェーン店ひとり酒(イラスト/パリッコ)

パリッコのチェーン店ひとり酒(イラスト/パリッコ)

 日常的に酒場へ通い、酒にまつわる連載や本を多数執筆している酒場ライター・パリッコさん@paricco)。普段は地元に密着していて、単独ではちょっと入りづらいような個人店を取り上げている彼に、ベタなチェーン店で飲んでもらう連載「パリッコのチェーン店ひとり酒」。  第10回に取り上げるのは、干物定食チェーン「しんぱち食堂」。最近街でよく見かける同チェーンには、目を疑うような値段のメニューの数々が……。

言い訳を頭のなかでくり返しながらたどり着いたのは…

 4月上旬だというのに、春を通り越して初夏がやってきてしまったかのような、あまりにも気持ちの良い天気の日だった。朝、仕事場へ向かおうと家を出た瞬間に思う。  どこかに行ってしまいたい……。  こういうとき、気ままなフリーライターというのは実にありがたい立場だ。仕事場といったって、個人で借りている小さなアパート。今日そこに出勤しなくても、僕を怒る人はいない。  当然、原稿の締め切りなど諸々に関しては自分の首を絞めることになるけれど、もうがまんできない! それに、こういう無意味な行動が頭をリフレッシュさせてくれ、新しいスポットや店と出会わせてくれ、それがまた次の仕事の糧になってゆくはず。そんな、誰も聞いていない言い訳を頭のなかでくり返しながら、僕はすでに仕事場とは別の方向に歩きだしていた。  気のおもむくままにふらふらと散歩すること数十分。たどり着いたのは、西武新宿線の上石神井駅。ここから無意味に電車に乗ってみるのもいい。なんたって天気がいいし。というわけで、ちょうどやってきた電車に飛び乗ってしまい、終点の田無駅で降りる。
しんぱち食堂

しんぱち食堂 エミオ田無店

生ビールが165円!?

 改札を出ると、駅ビルに「しんぱち食堂」があった。まだ午前9時ほどなのに、すでに営業中。どうやら「朝定食」が提供されている時間帯のようだ。  まだ入ったことはないが聞いたことはある。確か、干物を中心とした定食が大人気の定食屋だった気がする。
しんぱち食堂

健康的でいいな

しんぱち食堂

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しんぱち食堂

「3羽いわし定食」……たまらない!

 ほ〜ら、いきなり良い出会いがあった。僕はふだん朝食を食べないので、焼き魚を中心としたちゃんとした朝ごはんなんて、いつ以来食べていないだろうか。これはもう、入ってみるしかない。  などと外観を眺めていて、もうひとつ我が目を疑うような事実に気づく。なんと、生ビールが1杯税込165円!? 激安大衆酒場でもそうそう見ない安さだ。あくまで定食を頼んだ人のためのサービスメニューのようだけど、そもそもこの店で定食を頼まない人なんていないだろう。
しんぱち食堂

なんたる誘惑

 不安要素は、朝の時間帯にアルコールが提供されているかどうかだけど……もしも頼めたら、“健康的に朝食を食べる朝”から“それをつまみにして飲む朝”に方針変更だ。がぜん盛り上がってきたぞ。いざ、おじゃまします。
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立派な定食が「561円」で!
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1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco

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