ライフ

“桃太郎県”岡山ならではの光景が。「目がバキバキで無表情」“不気味な鬼たち”が仁王立ちで店を占拠する和菓子店

 廃墟、巨大工場、珍スポット、戦争遺跡、赤線跡など全国に存在するリアルな《異空間》《異界》スポットを紹介し続ける旅行マガジン『ワンダーJAPON』。当連載は、編集長である私、関口 勇がこれまで誌面で取り上げたなかでも、「特にインパクトが強かったスポット」をピックアップしたうえ、順次紹介していくものだ。  桃太郎伝説は日本各地に伝わるが、もっとも有名なのは岡山県だ。鬼を退治した吉備津彦命を祀る「吉備津神社」や温羅(うら)という伝説の鬼が住んでいたとされる「鬼ノ城」などゆかりの地が多く、桃太郎のおとぎ話に出てくる「きびだんご」の「きび」も吉備国(岡山)とされている。2018年には岡山空港の愛称を「岡山桃太郎空港」とするなど、県をあげて岡山=桃太郎を推し進めている印象を受ける。
鬼びっくり饅頭本舗

岡山の国道180号線沿いにある和菓子店「鬼びっくり饅頭本舗」。コワモテの鬼が店を占拠しているのが目印だ

無表情で不気味な鬼のマスコットが仁王立ち

 そんな“桃太郎県”ならではの和菓子屋さんが、鬼ノ城と同じ岡山県総社市にある。その名も「鬼びっくり饅頭本舗」。創業は昭和50年代と歴史は優に50年を超える。JR総社駅から北西に車で約25分。蛇行する高梁(たかはし)川に沿って走る国道180号線のゆるやかなカーブの外側に、どことなく昭和レトロな建物がポツンと建っていたら注意。
鬼びっくり饅頭本舗

店の正面右手には先代店主が自作した4体の鬼がいる。手にしているのは「鬼びっくり饅頭」だ

 金棒を手にした鬼たちがまるで占拠してるかのように、建物の周りや屋根の上に仁王立ちしていたらそれが目的の店だ。巨大なもので高さ3mはあるこの鬼たちこそ、元大工で「鬼びっくり饅頭本舗」初代店主が手作りしたお店のマスコットだ。建物の正面右手に4体、左手に1体、屋根の上のも合わせて全部で6体。  マスコットといったらかわいらしいものが当たり前だけど、こちらは一切の媚びを捨て、気持ちよいぐらい怖い方に振り切った鬼になっている。麻紐をほぐして作ったようなパンチパーマに目がバキバキで無表情、牙以外にリアルな歯もあり、人間とは完全に別物の“鬼よりも人間に近い姿”に、より不気味な恐ろしさが伝わってくる。

「鬼びっくり饅頭」の由来は……

鬼びっくり饅頭本舗

屋根の上からも鬼が見下ろしている

 看板商品「鬼びっくり饅頭」の包装紙に名前の由来が書かれていた。現代は対話と協調の時代なので、鬼退治などせず、鬼もびっくりするほど美味しい饅頭を持参すれば商談はうまくいく、そんな内容だ。これが「鬼びっくり饅頭」の由来。あんなにコワモテの鬼を作ったにしては、ずいぶんピースフルなお方だったようだ。  店が創業した昭和50年代といえば中東戦争やベトナム戦争が終わるも、米国と旧ソ連の冷戦時代のまっただ中。それから半世紀が過ぎたというのに、ウクライナ戦争やイスラエルとイランがミサイル攻撃し合うなど、いまだに戦争が絶えない。現代も依然として平和の祈る「鬼びっくり饅頭」が必要な時代。ちなみにお饅頭は優しい甘さと食べやすいサイズでバクバクいけた。
鬼びっくり饅頭本舗

店の正面左手には上半身が2体合体し、顔が2つ腕が4本の特殊な鬼がいる

 それにしてもものすごく怖い顔。特に正面右手にある鬼の上半身が2体合体して腕が4本あり、顔が前後2つあるものなど見たことのない鬼になっている。ただ、全部の鬼が同じ縞柄のパンツを履き、真顔で小さなお饅頭を手にしている姿を見ていると、だんだん怖くてかわいい「こわカワ」に見えてくるから不思議だ。  2022年夏に訪れた時に入口に貼り出されていた『月刊タウン情報おかやま』の記事には、近隣の山にこの鬼とまったく同じものがもう1体あると書かれていた。その時は場所がわからず、会いに行けず。
次のページ
マスコットの鬼は「全部で10体」
1
2
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ
記事一覧へ
【鬼びっくり饅頭本舗】
〒719-1312 岡山県総社市種井45-1
営業時間 8:00〜19:00

【お宝屋敷おおとよ】
〒789-0307 高知県長岡郡大豊町穴内2304
営業時間 9:00〜16:00(不定休)
料金 300円
【関連キーワードから記事を探す】