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クラシックコンサートに現れる“ブラボーおじさん”に「迷惑」と批判殺到…早すぎる“大声”で余韻が台無し

「早過ぎる『ブラヴォー』は、私どもにとってうれしいものではございません」 10月11日にX(旧Twitter)へ投稿された、名古屋フィルハーモニー交響楽団のこのポスト。文末には「失望を感じております」と、強い怒りを感じさせる言葉も添えられていたが、多くの共感の声を呼んだ。 一方、お笑いライブの観客に対する芸人からの注意喚起も、このところ見受けられるようになった。「M-1グランプリ」決勝の常連であるヤーレンズや、「キングオブコント」チャンピオンのシソンヌじろう氏などの発言が記憶に新しいだろうか。 ジャンルは違えど、クラシック音楽もお笑いも、演者と客とで成り立つ舞台があるのは同じこと。自宅はさておき、会場に行くならマナーや不文律を犯さないかと、心配になる。 そこで、日本大学大学院芸術学研究科音楽芸術専攻作曲コース博士前期課程を修了したピアニストでありながら、2011年からはお笑いの舞台でも活動する“クラシック芸人”である、まとばゆうさん(@yufantoday)に、それぞれの現場の様子や、マナーについて詳しく聞いた。
コンサートホール

画像はイメージです

観客のマナーは低下したのか?

観客への注意喚起が目立つようになったのは、実際に観客のマナーが低下したからなのだろうか。クラシックのピアノコンサートを20年近く開催するまとばさんは次のように話す。 「以前から早すぎるブラヴォーを叫ぶ人はいましたし、大きく変化したとは思いませんね。SNSが広まって、演奏者側が発信をしやすくなっただけだと思います。関係者やファン以外は目の当たりにすることがなければ、演者が意見表明をする場もなかっただけかと」 事実、クラシックの世界には「ブラヴォーおじさん」なる言葉が以前より存在している——。そんなことも今回の騒動にあたっては言及されていた。

ブラヴォーに正解のタイミングはあるのか

まとばゆう

まとばゆうさん

件の名古屋フィルハーモニー交響楽団の投稿では「ブラヴォー」が「早過ぎる」ことが指摘の対象となった。そもそも、なぜ早いことがNGになるのか。 「ドビュッシーの曲などに特徴的ですが、クラシックは『余韻』も作品の中に含まれていることがあります。無音の中にある緊張感も、曲を構成する要素ということです。早すぎるブラヴォーはその静寂を壊してしまいますよね。だから咎められてしまうのです。コンサートの空間作りには、お客様の協力もあってこそ。余韻の重要性を理解してくださっている方は、咳払いがしたくても、その間を待ってくださります」 昨今、若者のクラシック音楽離れが叫ばれている。だが、拍手ひとつにも知識や理解が求められると思えば、足が遠のいてしまうのも想像に難くない。 周囲の観客にタイミングを合わせればよいかと考えても、誤ってブラヴォーおじさんに倣ってしまったら……あなや。拍手やブラヴォーの「正解」のタイミングは、曲を知っていなければわからないのだろうか。 「そんなことはないですよ。集中して見ていると、演者の緊張感が伝わってくるものだと思います。その緊張感があるうちは、まだ曲です。楽団のコンサートなら、指揮者がタクト(指揮棒)を下ろしてお客様を振り返るあたりで、演奏者の緊張がフッと解ける瞬間があります。ピアノコンサートなら、演奏が終わって立ち上がった瞬間くらいですね。真摯に見てくださればそのタイミングはおのずと見え、頃合いで拍手なりブラヴォーなりをしたくなるはずので、過度な心配はいりません」
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私語をする観客に舞台上から注意したことも
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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