「生活保護カットが職務」若手ケースワーカーの“使命感”
芸人親族の生活保護「不正受給」疑惑でワイドショーが賑わった。まるで不正受給の横行で自治体財政が逼迫しているかのようなイメージが植えつけられているが、その総額は全体の0.38%。その一方で、「受給資格があるのにもらえない」という大きな問題があった!!
◆不正受給は全体の0.38%!受給資格があっても門前払いに
都内の区役所で生活保護のケースワーカーとして勤務するかたわら、「全国公的扶助研究会」事務局長も務める渡辺潤氏は、福祉行政の実態についてこう語る。「役所の中でも福祉は人気のない職場で、『左遷』という扱い。やりたくてやっている人は非常に少ない。ですから、『申請を手助けしてくれるのではないか』と期待を抱いて出かけると、やる気のない対応で放置される可能性は十分にあります」。
もっと深刻なのはケースワーカーによる“イジメ”だ。貧しい人に同情するどころか、今の生活保護バッシングを喜んでいる若手ケースワーカーが増えているという。
「東京都特別区の採用試験に合格した20~30代の若手は、大学を出て競争を勝ち抜いた“エリート”です。恵まれた家庭に育った人が多くて、『挫折して生活が崩れていく』ってことを頭では理解できても実感はできない。むしろ『貧困に陥ったのは自業自得』と考えている人が多いんですよ。今はどこの自治体も財政が厳しいので、『自分の仕事は生活保護をカットすること』という“使命感”に燃えている人もいます」(渡辺氏)
実は不正受給は言われているほど横行しているわけではない。’10年度の統計によると、不正受給額の合計は128億7425万円で、総額の0.38%。しかもこのなかにはさほど悪質とは呼べない事例も含まれている。
「現場の感覚で言えば確信犯的な人はごく少数です。高校生など未成年のアルバイト収入は申告しないでいいと誤解していたケースが多いですね。4年前からは預金口座に加えて課税調査も行うようになりました」(同)
【渡辺 潤氏】
福祉事務所のケースワーカーが集う全国公的扶助研究会の事務局長を務める。東京都内の区役所で生活保護面接員として勤務
― 本当は[厳しい/冷たい]日本の生活保護制度【5】 ―
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