北尾トロ『やっぱり”編集者の顔がくっきり見える雑誌”が好きですね』
―[この雑誌がすごい! ベスト30]―
世間では「電子書籍元年」なんて言われてるけど、SPA!読者なら「やっぱり紙の雑誌が好き!」という人は多いはず。そこで、目利きの出版&ウェブ業界人たちに「いま面白い雑誌」を挙げてもらい、その魅力を語ってもらった。さあ、どの雑誌から読んでみる?
やっぱり”編集者の顔がくっきり見える雑誌”が好きですね
選者:北尾トロ
’58年生まれ。著書『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』が映画化され、公開中。
9月に新しいノンフィクション誌『レポ』を立ち上げた
『レポ』公式サイト http://www.repo-zine.com/
『野宿野郎』は、最初ネットで見つけて、たぶん面白いんじゃないかと思って買ってみたら、やっぱり面白かった。特に印象的な記事があるとか文章がうまいとかじゃないんだけど、醸し出すムードというか、「こいつらホントに野宿が好きなんだな」っていう(笑)。作ってるのは女性なんだけど、実際に野宿をしてて、読者も野宿してる。発信してることとやってることが一致してるのがいいよなあ、と。
『ワンダーJAPAN』も編集者の「こういうのをやりたい」って感じが出てますね。廃墟とか工場とか公園遊具とか、そういうのばっかり撮ってるマニアが集まって、すごいヘンテコな世界ができてくる。そこにさらにマニアが集まってきて……という、ある種、読者ページの塊みたいな部分も楽しい。
『TRANSIT』も「新しい旅の雑誌を作りたい」という姿勢がビッと通ってる。ガイドとしては偏ってるので役には立たない。でも、旅行雑誌って旅心を誘うのが大事じゃないですか。今そういう雑誌がほとんどなくて、実用誌ばかりになっちゃってるなかでは稀有な存在。その志に共感する人は、どの地域の特集でも買ってくれるでしょ。そうじゃなきゃ、これだけ続かないだろうし。そういう意味では『薪ストーブライフ』ってのも、ニッチなところでよく勝負してると思う。
やっぱり”編集者の顔がくっきり見える雑誌”が好きですね。「こういうのをやりたい!」と、気合満々でスタートして、結果は読者が出す、と。それがいつの頃からか、あらかじめ広告収入をアテにするとか、読者次第というよりクライアント次第になっちゃって、それが誌面に滲み出てる。そういう雑誌が消えていくのは当たり前のことだと思いますね。
今回、『レポ』という雑誌を立ち上げたんですけど、「この時代に何で紙の雑誌?」と(笑)。でも、電子書籍で「すごい!」ってのをまだ見てないから。単に「紙より安い」だけじゃつまらないし、「こんな表現は紙では無理!」となって初めて値打ちが出てくるわけで。まあ、僕はそのへん疎いので電子と紙を比べてどうこうじゃなく、現時点での「やりたいこと」が『レポ』だったんですけどね。(談)
『野宿野郎』
編集・発行/かとうちあき。「人生をより低迷させる旅コミ誌」が
キャッチフレーズの手作り感あふれるミニコミ誌。
かとう氏は先頃、著書『野宿入門』も上梓
『ワンダーJAPAN』
発行/三才ブックス。「フツーの旅はもう飽きた。」
がキャッチフレーズの「日本の《異空間》探検マガジン」。
廃墟、工場、巨大仏、珍建築などがてんこ盛り
『TRANSIT』
発行/euphoria FACTORY、発売/講談社。
「コラムとかも充実してるし、有名な人も結構出てくるけど
名前に頼らず企画中心」(北尾氏)と、ある意味、贅沢な作り
『薪ストーブライフ』
発行/沐日社。薪ストーブのすべてがわかる。
「都内に住んでるし薪ストーブなんて買えないけど、
ないものねだりで『いいなあ、こういうの』と思っちゃう(笑)」
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