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200億円の再開発事業から1丁200円の豆腐作りへ

200億円の再開発事業から1丁200円の豆腐作りへ
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周浦宏幸さん(42歳) 【経歴】旧特殊法人勤務 → 豆腐屋経営 【年収】800万円 → 400万円 マンション5棟を含む200億円規模の再開発事業から、1丁200円の豆腐作りへ。形は同じ四角形だが、かなりスモールなものづくりへ転身した、周浦さんのキッカケは病気だった。 「10年間勤務した旧特殊法人の8年目に肝臓の病気になって、食事療法に取り組んだんですよ。肉や魚をひかえ、玄米と野菜中心の食生活にしたら、肝機能の数値もグンと上がり、朝5時頃には目が覚めるようになりました」  食の大切さを体感した周浦さんは、日本の食や農業の現状を知るための勉強会などに通い、自分が納得できる食べ物を作りたいと思うようになった。 「再開発の仕事って、以前あったものを潰して新しいものを建てるんですけど、本当はなくさなくてもいいものまで潰してるんじゃないのか。でも給料をもらっている以上、そんなことを考えるのは『悪』だし、仕事と割り切ってやらざるをえない。そんな葛藤も、見えないストレスになっていたのかも」 そこで、以前からおいしいと思っていた池袋の大桃豆腐店で2年間修業を積み、昨年9月、千葉県香取郡神崎町に約30坪の豆腐店「月のとうふ」を開業。地元産を含めた有機国産大豆と、酒蔵の多い町の地下水、海水由来の天然にがりだけで豆腐を作っている。 転身後、周浦さんには大きな変化が2つあった。ひとつは、毎日16時間労働で、時にはヘロヘロな状態で定期検査を受けても、肝機能は前職の頃より良好なこと。 「自分の好きな仕事をして、お客さんにも喜ばれていると、病気にはなりにくいんでしょうか」  そしてもうひとつは、「幸せ」の感じ方が変わったこと。 「前職の頃は、百数十万円のハーレーダビッドソンを買ったり、海外旅行したりというのが幸せだと思っていました。でも、それはメディアから刷り込まれた不特定多数の”幸せ”だったんじゃないか。他人と同じものが欲しい、同じことをしたいと、いつの間にか思わされていたのかもしれません」  今の彼は、毎朝4時に起きて作る豆腐を売って店の経営を続けながら、「夫婦2人で健康に暮らせること」が幸せだという。転身と減収を経て摑んだ、他人と比べない自分だけの幸せのかたちだ。
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「大豆の自給率は加工品を含めて5%。斜陽産業だからこそ、 国産大豆にこだわる豆腐屋をやることに意義を感じる」(周浦さん) ― [競わない生き方]のススメ【3】 ―
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