高齢者犯罪を急増させるのは「貧困」ではなく「孤独」
超高齢化社会とともに、増え続ける高齢犯罪者。手を染める犯罪もドラッグの運び屋や闇金、闇名簿作成と広がりを見せ、集団化しているというのだ。カネのある高齢者を騙し、喰い物にする高齢犯罪者たち。真面目に生きてきたにもかかわらず、彼らはなぜ犯罪に走ってしまうのか?
高齢者犯罪を急増させるのは「貧困」ではなく「孤独」
それまでは真面目な一般市民であった高齢者が組織犯罪の手先に引きずり込まれる――。この背景に、福祉政策や再雇用環境の整備の問題や貧困による将来の不安などに原因を求めることができるでしょう。
ですが、生活が苦しい高齢者はほかにいくらでもいるのに、ほとんどは犯罪に手を染めません。そう考えれば、実は共通するのは「貧困」ではなく、「孤独」にあるのです。
内閣府の調査によれば、高齢者が子供と別居している場合の「子供との接触時間」は「ほとんど接触がない」が2.6%という低い数値でした。しかし、私が高齢犯罪者を対象に同じ調査をしたところ、「ほとんど接触がない」と回答した強盗犯が63%、詐欺犯が60%、殺人犯が43%という驚きの結果が出たのです。
良いことをしても誰も褒めてくれないし、悪いことをしても誰も咎めない状況。近隣の人たちはおろか、子供とすら接触のない、この社会的孤立こそが、高齢者犯罪を促進させていると思われます。
高齢者犯罪を抑止するには、社会や地域の中でどこかのコミュニティに彼らを取り込むことが必要。高齢者本人が人に「見守られている」と自律的に意識できる環境をつくることが大切です。
【太田達也氏】
慶応大学法学部教授。日本の刑事政策と被害者学の一人者として、高齢犯罪者に対する刑事政策や更生保護についての調査を続ける
取材・文・撮影/鈴木大介
写真/時事通信社
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