津田大介「震災報道で一番株を上げたのは会見生放送などをしたニコニコ動画」
東日本大震災が発生してから怒濤の1か月が過ぎた。連日、この震災に触れないメディアはないほど。果たして有象無象の情報の海の中で何を頼りにすればいいのか!? 5人の識者が震災メディアをぶった斬り!
一番株を上げたのは会見生放送などをしたニコニコ動画
【津田大介氏】 メディアジャーナリスト
ソーシャルメディアとTwitterの達人
’73年、東京都生まれ。『TwITter社会論‐新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)ほか、著書多数。メディアをテーマにした講演も各地で行っている
“Twitter金髪大明神”との異名をとり、インターネットメディア業界でブレイク中の津田大介氏は、今回の震災報道をどう見たのか。
「この災害を通して、既存のマスメディアは、ネットに抵抗感がなくなってきたように思えますね。中でも印象的だったのは、TVとネットの連携が早かったことです」
この点で、津田氏はNHKの動きを高く評価している。
「NHKは、震災前日に『クローズアップ現代』でネット放送をテーマに取り上げていたのが非常に評判が良く、今後のTVとネットの連動の形が見えてきたところだった。その翌日の震災で、ネットは通じるけどTVが見られない人が多数出てきたところ、一般の人がNHKの番組を動画で撮って、Ustream配信し始めた。本来、著作権などの問題がある行為だけど、これをNHKの一広報の人が公式Twitterで許可を出したのです。ニコニコ動画も記者会見中継などで大活躍でしたね」
その後の番組作りも、「取材力と予算の違いが明確に出ていたので、NHKの独り勝ちです」と津田氏。
紙媒体はどうだろうか。特に週刊誌では、各媒体がここぞとばかりに独自性を発揮していたが……。
「まず、新聞は震災3週間後くらいから、TVがカバーしきれない現地の小ネタを取材していたのがよかったですね。ただ、原発に関してはメディアの違いがモロに出ました。TV・新聞は政府発表中心の安全寄り。週刊誌は東電から広告をもらっているところも多かったですが、『週刊文春』を中心に、新聞より原発の危険性を指摘する記事が多かったです。海外も日本に注目するなかでは、『nature』の原発記事が読み応えがあったかと」
また、冒頭で触れた、震災を通しての、マスメディアとネットとの連携は、TVだけでなく紙媒体にも見られたという。
「多数の紙媒体がこれを機にTwitterを活用し始めました。炊き出し情報等の生活に直結した情報は、ネットのほうが小回りが利く。この未曾有の事態で、各媒体はこぞって、ITがライフラインに直結する情報インフラだ、という印象を強くしたのでは」
多くを失った大震災のさなか、インターネットとその他メディアの距離は幾分か縮まったようだ。
◆メディアへの影響
柔軟にネットと連携した媒体の勝ち。震災が、報道の在り方を変えた
【ネット】ニコニコ動画
「ネットメディアのなかで一番株を上げたのはニコニコ動画。会見の中継に、同時配信に、報道チームがないなかで試行錯誤しつつ独自の震災特番も始めた」と津田氏
【雑誌】文藝春秋『週刊文春』
東京電力の大手マスコミ接待の事実を暴いた『週刊文春』3/31号。まさに震災当日に、幹部や編集長クラスらと中国接待ツアーを楽しんでいたとのこと
【海外メディア】『nature』
「『nature』は、海洋汚染に関するQ&Aが充実していた。科学に基づいているので信頼性もある」と津田氏は評価。日本語訳はインターネットで閲覧可能
震災報道[アテになるメディア]判定会議 -【1】
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