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「やる気のある女」と「やる気のない男」に冷酷な日本社会

上昇志向,仕事 今や男の給料だけで妻子を養うのは難しい。夫婦共働きがスタンダードになり、妻が30代で仕事を辞めてしまうと、正直言って途方に暮れる、という男性は多い。だが、30代以上の女性が働く環境は整っているのだろうか?

女性の年代別労働力率」(※)をみると、20代、40代に比べ、30代が落ち込む=M字カーブになっている。仕事も覚え、職場や相手先との信頼関係もでき、自分で回せるようになる働き盛りの30代は、結婚や子育ての時期にもあたる人も多く、辞めてしまうからだ。さらには、出産・育児を経て復職したとしても、受け入れる環境が不十分だったり、休職前と同じ職務には就けないといった問題もある。

※「女性の年代別労働力率」⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=324033

 こうした女性のキャリアをとりまく問題を、雇用の現場を長く見続けてきた海老原嗣生氏は、著書『女子のキャリア』(筑摩書房)のなかで、「30代中盤女子の、これから稼いで会社に利益をもたらしてくれる社員を手放すのは『育てた分、丸損』だ」と斬る。

「30代中盤は、大企業の昇進スケジュール的にいえば係長適齢期、ちょうど管理職の入り口です。それまでの10年を、メーカーを例にあげると販売会社でのセールスを経験して、工場とも仲良くなり、マーケティングや商品開発のスタッフとも気心が知れて、それで初めて大きな支店網を管理できるようになる。企業としては、最初の10年はあくまでも『勉強期間』なのです」

 海老原氏はさらに、女性が働きにくい社会は、男性にとっても生きにくいと、問題を提起している。海老原氏に話を聞いた。

――なぜ女性のキャリア問題に注目したのでしょうか?

海老原: やはり、雇用の現場を見ていると、ジェンダー問題があまりにも歴然としていることを感じてしまったからです。「育児は女性の役目」という基本があり、だから、「途中から女性はキャリア競争から脱落する」ことが前提になっています。一生懸命頑張っている人たちが、女性というだけで「休む」ことが強いられているのに、「それはオンナの幸せ」と普通に思われている不思議さ。

 これが、たとえば、「中卒は休め!」とか「どこどこ出身者は途中で脱落しろ!」というような、学歴・地域差別であれば、まったく通じないのに、なぜか、「女性」というのはひとくくりにされて、放逐されていくことに、誰も疑問を感じない。野田首相が戦略会議で話していた印象的な言葉があります。「女性が子供を産んでも、育児をしながら長く勤められる社会」。こんな政治家の言葉に敏感なひとでさえ、「育児=女性」と考えてしまうのです。

 それと、こんな「女性は添え物」的な扱いに、喜んでいる女性たちも多いこと。男性は誰でも基本、「階段を上り続けること」が強いられて、そこから降りた人は、「だめんず」と烙印を押されてしまいます。一方、女性でやる気のない人たちは、喜んで階段を降りられる。ために、「女性でよかった」といいます。トータルで考えると、今の世の中は、やる気のある男性に都合よく、同様に、やる気のない女性にも都合がよく、やる気のある女性とやる気のない男性に厳しい、という社会構造にあります。このあたりに、そろそろ「男の著者が」突っ込んでみたかった、というのが執筆の動機です。

――ということは、男性サラリーマンにとっては、あえて上を目指さない、平坦な働き方もあっていい、ということですね。では、この本で一番伝えたかったことは?

海老原嗣生

海老原嗣生氏

海老原: 欧米では女性の社会進出が進んでいるといわれていますが、それでも、30年前はどの国も全くの男尊女卑社会でした。日本は女性の進出がまだまだですが、それは「遅れている」だけです。出発が他国よりも20~30年ほど遅かったから、その分、発展途上にある。

 つまり、あと20年もすると、欧米同様に女性が社会進出するのが普通になっていくはず。だから、あと少しの辛抱だと思っています。そして、今の惰性で「女性は添え物」的な扱いに満足していると、20年後、みなさんが初老の域に達する時代に、「困ったなぁ」と感じてしまう危険性がありますよ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>

【海老原嗣生氏】
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエージェント入社。人事制度設計などに携わったあと、リクルートワークス研究所へ出向。2008年にHRコンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げ、代表取締役に就任。著書に、『仕事をしたつもり』(星海社)、『ずっと働きたい「従業員300人以下」の会社選び』(プレジデント社)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)

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