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『月刊円周率』にガクゼン【2012年・珍書の10大ニュース】

スカイツリー開業にロンドン五輪と、今年もいろんなことがありました。が、ニッチな世界の出来事も、大きな世界の潮流を映し出す。というわけで、さまざまなジャンルのウォッチャーたちに今年の10大ニュースを聞いた! 【センスが光る珍書】読めば企画のセンスも磨ける!?
ハマザキカク氏

ハマザキカク氏

 大ヒットはせずとも、斬新な切り口が好事家たちの間では話題騒然!そんな珍書のベスト10を、毎日ほぼ全ての新刊情報をチェックしているハマザキカク氏が選出。 「『工場萌え』以来の建物・都市ネタも下火かな……という時期に登場した『東京「スリバチ」地形散歩』は、便乗本も多く出るほどのブームをつくりました。『世にも奇妙な人体実験の歴史』『図説 死因百科』といった死に関連するもの、『ナチスのキッチン』のような戦争と食料に関わるものも、業界内では流行しましたね。よりライトなものでは、『野球部あるある』『吹奏楽部あるある』のような共感系、『爆笑テストの珍解答』などのネット発の笑えるネタを扱った書籍も目立ちました」  一方、『みんなの機内食』のようなアーカイブ系サイトの書籍化は「ネタ切れに近い印象」だそう。 「新たなネタ元になるのは海外。私も『世界珍本読本』という本を手がけましたし、『それ行け!! 珍バイク』を出版したグラフィック社のように、海外の珍書の翻訳・出版を積極的に行う出版社は増えると思います。また『体脂肪計タニタの社員食堂』以降、企業とのコラボ本がブームで、その周辺からも珍書が生まれる予感です」  書籍に限らず「新たなアイデアは出尽くした」などと言われがちな現代だが、「驚くような本はまだ生まれるはず」とハマザキ氏。 「『国会図書館にしかない本』『月刊円周率』など書籍の概念を揺るがすような本を量産する暗黒通信団のような人たちもいますし、『ナチスのキッチン』のように、王道のネタも新たな切り口で見せれば、新しくて面白い本になります。これからは編集者のアイデアがより問われるようになると思いますし、そのセンスを磨くには、珍書をチェックするのが一番なんですよ」 ●1位 『東京「スリバチ」地形散歩』皆川典久著、洋泉社 凹凸だらけの東京の地形に着目し、土地の高低差と歴史・建築などを一緒に楽しむ、地形エンターテインメントというジャンルを創出 ●2位 『股間若衆』木下直之著、新潮社 街中の裸体彫刻の股間部分を学術的に考察。著者は東大教授で美術史家。珍書らしいタイトルだが大手で真面目なイメージの新潮社刊 ●3位 『月刊円周率9・10・11月合併号』暗黒通信団 書かれているのは円周率だけ。ほか、『国会図書館にしかない本』など斬新な珍書を愉快犯的に量産する「暗黒通信団」は超注目 ●4位 『それ行け!! 珍バイク』ハンス・ケンプ撮影 グラフィック社 信じられない量の荷物を載せ、ベトナムの町を滑走する珍バイクを捉えたロードフォト集。版元は邦訳の珍書が増えている注目株 ●5位 『世にも奇妙な人体実験の歴史』トレヴァー・ノートン著、文藝春秋 「淋病患者の膿を自分の性器に塗りつける」など自らの肉体で危険な実験を行い、人類の危機を救った偉大な科学者たちの逸話を紹介 ●6位 『みんなの機内食』機内食ドットコムRikiya著 翔永社 世界のエアラインの約200フライトで、実際に提供された機内食を写真と文章で紹介。投稿サイト「機内食ドットコム」の書籍化 ●7位 『ナチスのキッチン』藤原辰史著 水声社 ナチスドイツ時代の家事や台所の合理化=ナチ化を分析し、食やエネルギーの問題を問い直す大著。著者は東大講師の農業経済学者 ●8位 『醤油鯛』沢田佳久著、アストラ 駅弁などに入る魚形の醤油入れを6科21属76種に分類し、図鑑的に仕上げた。同社は一昨年『ランチパックの本』も出している ●9位 『海外の日本語』シリーズ 明治書院 今も当地の外国人の間で使われる日本語を、接触言語学的な視点から分析した『サハリンに残された日本語樺太方言』など3冊を刊行 ●番外 『世界珍本読本』どどいつ文庫著 社会評論社 ハマザキカク編集の書籍。千駄木のキテレツ洋書店・どどいつ文庫が販売してきた放置自転車写真集、法廷画集など200の珍書を紹介 【ハマザキカク氏】 サブカル編集者。珍書を量産する社会評論社のサブカル編集者。今年手がけた書籍は『消滅した国々』『完全自殺マニア』『ニセドイツ3』『世界珍本読本』など ― 2012年ニッチな世界のジャンル別10大ニュース【5】 ―
世界珍本読本

日本の本屋では見た事もない珍書達

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