更新日:2013年02月23日 18:30
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事件報道の「むしゃくしゃして」はホントにそんな供述してるのか?

「むしゃくしゃしてやった」「ムラムラしてやった」など、事件報道には日常ではあまり使わない特有のフレーズがある。ほかにも「バールのようなもの」とか「みだらな行為」とか、気になる言い回しがいろいろ。そんな事件報道における定番用語のナゾに迫る! ◆「むしゃくしゃしてやった」「ムラムラしてやった」とかホントにそんな供述してるの? 報道 事件報道でよく見かける「むしゃくしゃしてやった」「ムラムラしてやった」という犯行動機。本当にそんな言い方をしているの!? 「基本的には正確にどういう言葉を発したかというのを、警察はあまり言いたくないんですよ」と言うのは、元毎日新聞記者でジャーナリストの佐々木俊尚氏。 「なぜなら“犯人しか知りえない事実”というのがある。裁判になったときに、報道されてないことを被疑者が知っていれば、真犯人である確証が高くなるわけです」  その点は警察側の意見も同じだ。主に被疑者の取り調べを担当していた元刑事の小川泰平氏は「たとえば性犯罪事件で、被疑者が『右太もものホクロが何ともいえなかった』と言ったら、それは犯人しか知りえない事実、いわゆる“秘密の暴露”です。これは報道機関に発表することはないので、『ムラムラして』と言葉を濁します。もう一つの理由は被害者感情を考えてのこと。被害者は必ず報道記事を見るものです。そこに被疑者の供述として『スレンダーで好みのタイプだったから後をつけて……』みたいなことが細かく載ってたら気持ち悪いでしょう?」と語る。  てことは、実際はもっと詳細を供述しているものなのか。 「ええ、事細かに取り調べをして供述を引き出しています。『むしゃくしゃして』にも実はいろいろあって、奥さんが浮気して子供は非行に走ってとか、上司のパワハラに耐え続けてきてとか。すると前者は『家庭の問題があり、むしゃくしゃしてやった』、後者は『仕事上のトラブルがあり、むしゃくしゃしてやった』となる。一般の方にそこまで伝える必要もないですからね。ウソではないけれど、当たり障りのない表現で発表するんです。ほかにも窃盗なら『生活に困窮して』『遊興費欲しさに』、傷害なら『カッときて』『酒に酔った勢いで』などもよく使いますね」  そういう定番フレーズって、誰が考えたものなんですか? 「昔から代々使われている表現ですね。若い人は『ムラムラして』なんて使わないでしょうし(笑)」  確かに。そろそろ新しい文言を考えたほうがいいような気も……。 ― 事件報道の[ありがち用語]ウラ読み辞典【1】 ―
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