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楽天・新外国人の「ハゲ力」に学べ

 東北楽天ゴールデンイーグルスが今季、前代未聞の大型補強をした。球場内外でマルチにパワーを発揮する、「スーパータレント集団」を戦力に加えたのだ。

 まずは地元仙台出身で、ダイヤモンドバックスからFAとなっていた斎藤隆をメジャーから呼び戻した。次に名門ヤンキースからメジャー通算434本塁打のアンドリュー・ジョーンズ(http://nikkan-spa.jp/359256)、通算61本塁打のケーシー・マギーを獲得した。

 震災復興にかける想いとは裏腹に、クライマックス・シリーズ進出への道のりは遠い楽天。ジョーンズとマギーの2人は、来日早々、被災した宮城県名取市の中学校を訪門。「ホームランを打つごと、打点を挙げるごとに寄付をする」と2人の名前を冠したMJ基金の設立を宣言したばかりだ。

イバニエス

子供たちにハゲしく落書きをされるメジャーリーガーたち。ヤンキースはチームとして多彩で継続性あるチャリティー活動「HOPE(希望)」を行っている。

 ジョーンズらメジャー選手は、シーズンのオン・オフを問わず日常的に社会活動を行う。なかでも昨季までプレーしていたヤンキース時代、ジョーンズが参加した脱毛症の子どもたちとの触れ合いは、我々日本人がハッとさせられるイベントだった。

 選手が訪問して、握手して、サインして……なんてありきたりの内容ではない。髪のない子どもたちが、ジョーンズのツルピカ頭に「カラフルな絵の具で落書きしまくる」というユニークなもの。同じく脱毛症のラウル・イバニェス(今季よりマリナーズ)をはじめ、多くの“ハゲ選手”が参加。彼らは満面の笑みを浮かべながら、子どもたちに“ハゲ頭”をいじられ、ベタベタに落書きされていた。

ジョーンズ

お騒がせ男の新外国人ジョーンズ(左)も満面の笑み

 タブー視されがちな内容を逆手に取ったイベントは、ユーモアとニュース性に富んでいて、チャリティー先進国アメリカの懐の深さが伺える。

 ヤンキースタジアムのあるブロンクス区は、かつて「世界最悪の犯罪地区」と謳われたエリア。貧しい人や、ホームレスも少なくない。そうした劣悪な状況からはい上がり、ファストフード店で働くウェイトレスのもとに、アレックス・ロドリゲスやロビンソン・カノーなどヤンキースのスター選手がサプライズで激励に訪れるイベントもある。

 当人たちはもとより、他の店員たちも、「オーマイゴッド!」と大騒ぎ。妹の大学進学や家族を支えるために働く彼女らは、「くじけそうになった時も、ヤンキースが勝つたびに乗り越える力が湧いてくるの」と語っていた。スポーツにはこういう見えない力が秘められているのだ。

 ちなみに楽天のマー君こと田中将大も、巨人の坂本、広島のマエケンら同級生プロ野球選手らとともに「88年会」を結成。年始から震災で被害を受けた小学生350人と野球教室などを行った。

 選手らが子どもたちに与える力、子どもたちから受け取るパワーは計り知れない。

 球団とファンの心がひとつに重なれば、震災復興パワーでクライマックス・シリーズ進出に期待が高まる今年の楽天。ひょっとするとイーグルスは、グラウンド上のパフォーマンスだけでなく、震災復興へのパブリックメッセージ性の高いマルチタレントを戦力補強の方針にしたのかも?

 もしそうであれば、社会の公器と謳われるプロスポーツチームの斬新なチャレンジと言えるだろう。

<取材・文・撮影/スポーツカルチャー研究所>
http://www.facebook.com/SportsCultureLab
海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!では3月に始まるWBCや、MLBの速報記事を中心に担当




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