エースは真っ先にクビ…不条理すぎるリストラの実態
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仕事がよくできる、実績もある将来有望な「エース」。リストラとは無縁だと思われがちな彼らだが、ひとたびトップの交代や経済情勢、業績が変化すると突然、大きな危機を迎えることになるという。
これまでのべ2000人のリストラにかかわってきた経営コンサルタントの中沢光昭氏は、現場の意思決定を次のように語る。
「まず、営業など収益部門にいる場合は、社内的にも目立つ半面、結果がわかりやすいためにリストラのターゲットになるリスクを常にはらんでいます。そうなると、経済情勢や業績が悪化し、上層部が責任のなすりつけ合いを始め、それまでは『君こそ我が社のヒーローだ』みたいな態度をエースに対してとっていた幹部が、『お前、何ぐずぐずやってるんだ!』と突然のように態度を豹変させたりします。その隣で、普段は目立たない間接部門(総務や経理を代表例として、内部監査、コンプライアンス、経営企画など)の人が、普段からのやっかみをここぞとばかりに発散させて『実は売り上げを上げていた一方で、よく売っていた商品は原価が高いものですし、販売経費をかけていたりしたので、そんなに儲けは出ていないんですよ』などと手のひらを返してきます。そうなると、スケープゴートを探していた幹部から見ると、格好のターゲットになるのです」
また業績の変化などでなくても、昨今、M&Aなどによって一夜にしてオーナーが変わることが珍しくはない。
「そこでやってくる新しい支配者によっては、それまでの組織で求心力や信頼のあった人材は、『重用するか・追放するか』の極端な二択をすることがあります。力があるらしいということがわかったとしても、旧体制の象徴をやっつけることで、自分の影響力を瞬時に高めようと考えるからです。過去に稼ぎ頭として社内的に大きな顔をしていた事業部の面々が、新社長によってエースが排除された途端に従順になるという光景はそこかしこでよく見られます。同様に、上司が転職したりすると、そのポジションには外から上司が入ってくる可能性があるので、途端に評価が変わる可能性があります」
現状がうまくいっているほど、そういった落とし穴には気をつける必要がある。
「今の自分の仕事や自分の部門が上手くいっている人は、自分が『王道』を進んでいると思っているため、人間関係などは二の次になってしまいがちです。そのため、本人はまったく意に介してもいない相手から嫌われていたりします。理不尽なのは間違いありませんが、そうした人たちがリストラの局面ではここぞとばかりに後ろから刺したりするのも現実です。エリートが窮地に追い込まれていくと、それまでさまざまな面で特別扱いをされていたことへの反動で、誰も味方してくれなくなることもありえます。事業環境が大きく変化したときに、社員は自分の身の振り方を考えるべきです。それまでは基幹事業で稼ぎ頭だったとしても、特定の顧客への依存度が高かったり、管理会計の方針が変更されたりすることで、急に赤字事業に転落する可能性はあります。誰もがエースであり続けることは不可能です。あなたの時代は終わった。会社はクールにそう見ているかもしれません」
一寸先が闇なのは企業も、個人も変わらない。いつか突然、訪れるかもしれない「受難」のためには、たとえ今は調子よくとも油断をしてはいけない。 <文/日刊SPA!取材班>
【中沢光昭氏】
経営コンサルタント。投資会社、経営コンサルティング会社などにおいて企業再生、成長を見据えた企業変革に約20年従事したあと、独立。現在も企業再生をメインに活動を行う。これまでに30社以上、計2000人以上のリストラに直接関わってきた。著書『
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