頭の中に住んでいる美女は元気ですか?【ジョバンニ・アレヴィ インタビュー】vol.2
―[ジョバンニ・アレヴィ]―
いろいろと破格なイタリア人の天才ピアニスト、ジョバンニ・アレヴィ(Giovanni Allevi)。クラシック形式のコンサートにもかかわらず、Tシャツにジーンズで演奏し「老人の評論家たちを渋い顔にさせた」という常識破りなスタイルもさることながら、そのアーティストとしての実力、人気も折り紙つきだ。
約2年半ぶりの日本ツアー、最終公演とサイン会が終わった直後のロングインタビューを、たっぷりとお送りしよう。
⇒vol.1「ピアノを持たない天才ピアニスト、うどんにハマる」https://nikkan-spa.jp/464036
――日本ツアー、お疲れ様でした! こんな時間(23時)からインタビューをしてしまって、すいません。
ジョバンニ:とんでもないです。先ほどまでのコンサートとサイン会で、ファンから力をもらっていますし、何よりもこんな時間まで待っていただいてありがとうございます(にこやかに)。
――さて、前回の取材は2010年11月のツアーのときでした。あのあと、実は半年後の2011年6月にまた来日する予定でしたが、東日本大震災のためにツアーが中止になってしまいましたね。
ジョバンニ:今日のコンサートにも2011年の中止になった公演のチケットを持ってきてくれた人がいました。そして、一昨日の横浜のコンサートにも、わざわざ福島から来てくれた人がいた。とてもうれしい気持ちになりましたね。
あの当時、震災で大きな被害があったことはイタリアまで伝わってきました。その中で、自分が日本に行くべきかどうなのか、タイミングは今じゃないんじゃないか、と考えたんです。私の親しい日本のファンからも「今は来日してコンサートをする時期じゃないから、ちょっと待ったほうがいいよ」と手紙が届きました。でも、私としては本当に日本に来たくて仕方がなかったんです。それで、今回、来日できたので本当に「お祭り」ですね。
――この2年半、あなたがどのような活動をしてきたのかを教えてもらえますか。
ジョバンニ:一番最初に挙げられることは、前回の日本ツアー(2010年11月)のときに頭の中に浮かんだバイオリン協奏曲がしっかりとした形になったということですね。大阪のホテルに泊まっているときに、第一楽章の構想が全部できあがったんです。イタリアに戻り、第二、第三楽章を全部書き上げて、完成したことがうれしい。
――前回の取材のときに、「世界初公開」と言って、我々の前でメロディを口ずさんでくれましたもんね。あれはうれしかったです。覚えていますか?
ジョバンニ:もちろん(と、またメロディを口ずさむ)。今はしっかり形になっていますからね、オーケストラでお聴かせしたいです。とにかく、日本は常に私にそういうインスピレーションを与えてくれます。そのことがうれしくて仕方がない。だから、私の夢としては、その曲をぜひ日本で指揮したいです。
――確かに、あなたが生まれて初めてつくった曲のタイトルは「JAPAN」。そして、アルバム『Alien』に収録されている「Tokyo Station」は東京駅の改札を出たときに“降りてきた”とおっしゃっていましたもんね。ちなみに、あなたはいつも頭の中に音楽が流れていて、その音楽は「頭の中に住んでいる魔女が持ってくるんだ」と言っていました。頭の中の魔女はまだ元気ですか?
ジョバンニ:はい(笑)。いや、もちろん元気にしているというか、そういうイメージなんですけど(笑)。もちろん、彼女が私を包み込むこともあるし、放り投げることもある。その両面がありますので。
――あれ? 前回はかなり具体的に魔女の説明をしてくれたのに(笑)。さて、2012年に『Sunrise』というニューアルバムを出しましたね。ジョバンニさんはCDをつくるときに、コンセプトを考えたりするんですか? お話を聞いていると、出できた曲をそのままパッケージしているようですが。
ジョバンニ:コンセプトは……ないですね(笑)。私は特別、コンセプトを考えないようにしています。私にとって音楽とは「そこにあるもの」で、私はそこに導かれているだけなので。何をつくろう、という意思はないです。音楽がどのように作られていくのかという過程は自分にとってあまり重要ではありません。
――では、ジョバンニさんにとって曲は自然に生まれてくるものだとして、アルバムのまとめ方、というのもコンセプトがない?
ジョバンニ:はい。私にとっては必然的なものなので。今回はそこに偶然、ピアノ協奏曲とバイオリン協奏曲があったから組み合わせましたけど。とにかく、普通のミュージシャンと違うのは、できたものをそのままCDにしてしまっています。コンセプトはなく。
――今回のCDでなにか特筆すべきエピソードのある曲はありますか?
ジョバンニ:CDタイトル曲の「サンライズ」ですね。自分がずーっと暗いトンネルの中を突き進んでいた時期がありまして、なかなかそれを抜けてくれない。それがやっと終わったときにできてきた曲なんですね。
――だからサンライズ、というタイトルなんですね。でも、普通のミュージシャンと違って特別な思い入れや制作過程のエピソードがある、っていう話じゃないんですね。あくまで、その曲が“降ってきた”ときの精神的な状態がエピソードになるという(笑)。でも、そのCDは日本版がまだ出ていないんですよね。ぜひ、日本版の発売を!
⇒vol.3「イタリア人も遠足の前に熱を出すヤツはいるらしい」https://nikkan-spa.jp/464136
<取材・文/織田曜一郎(本誌) 通訳/堂満尚樹> ハッシュタグ