[中韓]の経済崩壊に便乗する投資法とは?
アメリカの金融緩和縮小の懸念で新興国経済に暗雲が立ち込めている。特に「シャドーバンキング」問題に揺れる中国や、アベノミクスによる円安で打撃を受ける韓国は株価暴落を予想する声も。暴落は本当にあるのか、それはチャンスになりえるのか、両国経済の見通しと投資戦略について専門家に聞いた
「アメリカの量的緩和(QE3)が9月に縮小されることがほぼ確実視されています。そうなれば新興国に投資されていた資金が一気に引き揚げられ、『叩き売り』になる恐れも」
と警告するのは、経済評論家の渡邉哲也氏だ。QE3は景気回復を目指して市中に通貨を供給する政策のこと。市場にばらまかれた投機マネーは新興国に向かい株価を支えてきたが、この政策がいよいよ終わろうとしているのだ。
「新興国はどこも戦々恐々としていますが、中でも影響が深刻なのはすでに多くの問題を抱えている中国と韓国です」
渡邉氏によると、不動産バブルの資金ともなっている「理財商品」の破綻懸念が表面化したシャドーバンキング問題で、6月には上海の短期金融市場の金利が一時30%に達したという。
「これは倒産前夜のリーマン・ブラザーズの調達金利に近い水準で、銀行間における取り付け騒ぎともいえる異常事態。中央政府による救済で一息つきましたが、QE3縮小で資金逃避が加速し、深刻な金融危機になる可能性もあります」
◆中国に依存する韓国。中韓はアジアで孤立状態に
一方、韓国も状況は深刻だ。
「韓国は経済規模に比して外貨準備高が少なく、その中身も換金性の乏しいものが大半。もしQE3縮小で外貨が急激に流出すると、対応できずに金融ショックに陥る可能性もあります」
これまで韓国はこうした緊急時に通貨を融通し合う「日韓通貨スワップ協定」を結ぶことで、実質的に日本の信用保証を受けてきたが、日韓関係の悪化でその一部が7月に失効した。一方で、日本は新たにASEAN諸国と協定を結ぶことで合意しており、今後はこれらの国々に保証を提供して影響力を強めるとみられている。
「日本のサポートを失いつつある韓国は中国への依存を強めており、両国はアジアで孤立している状態。後ろ盾が日本から中国に変わったことで韓国の国際的な信用は落ち、リスクは高まったといえます」
今後の中韓の経済を左右する、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月17・18日に開催されるのだが、約65%の確率でQE3縮小が決定する見込みだ。
「株価はすでにQE3縮小を織り込んで動いているので、予想通りの内容なら大きな変動はなく、ゆるやかに下落していくのでは。万一厳しい内容のサプライズがあれば暴落も懸念されますが、もし先送りということになれば一時的な上昇もあるでしょう」
一方、新興国投資に詳しい戸松信博氏は、「QE3縮小は、投資チャンスにもなりえる」と話す。
「中国は直近のGDP成長率や鉱工業生産、乗用車販売台数などの経済指標が市場の予想を上回っており、目先の底は打ったと考えられます。株価の割安度を示すPERはリーマンショック後の最安値レベルに達して、QE3縮小で株価がもう一段下がることがあれば、絶好の押し目買いチャンスにも」
前年を下回っているとはいえ、GDP成長率は7%台を確保していることを再評価する動きもあるうえ、新興企業向け市場である創業板市場はむしろ上昇しており、年初来高値を更新中だという。
「スマホの普及で好調なインターネット関連、政府が推進する政策に関連する業種など成長が見込めるセクターなら上昇は十分期待できます。QE3縮小後もアメリカ経済が好調を維持すれば、むしろ中国株に資金が戻ってきて『爆上げ』の可能性もあります」
⇒【次回】「[中韓]の経済崩壊に便乗して目先は「売り」」へ続く https://nikkan-spa.jp/507026
【渡邉哲也氏】
経済評論家。内外の経済・政治情勢を分析。近著に『この残酷な世界で日本経済だけがなぜ復活できるのか』
【戸松信博氏】
グローバルリンクアドバイザーズ代表取締役。個人投資家に中国株など新興国投資情報を提供するほか、ファンドの組成運用も手がける
※株価は9月4日時点 写真/時事通信社
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